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2022年映画ベスト10


2022年映画ベスト10

 

あけましておめでとうございます。今年のベスト、今年のうちにをモットーにしておりましたが、間に合いませんでしたッ! 年が変わると、今年最高の~みたい言い回しが使いづらくなるんだよな。2022年の劇場新作鑑賞本数は72本。単純計算するとちょうど月6本ですが、下半期はコロナにかかったりワールドカップがあったりしたので、上半期偏重かもしれない。

 

1120

 

20本というとベスト16+グループリーグで散ったけどいいチームという感じか。いや出場するだけでえらい! カウントダウン!

 

20.『もっと超越した所へ。』

19.『そばかす』

18.RRR

17.LOVE LIFE

16.『恋は光』

15.『ベルファスト』

14.『リコリス・ピザ』

13.MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』

12.『わたし達はおとな』

11.『ケイコ 目を澄ませて』

 

正直『ケイコ~』と『わたし達はおとな』はベスト10にいれたかったですね~~。むしろ絶対入ると思ってたし。

 

 

10.『四畳半タイムマシンブルース』

2022年のタイムリープ枠。そりゃこんなの面白いにきまってる。『四畳半神話大系』×『サマータイムマシン・ブルース』の魔改造。記憶が曖昧だけど結構そのままだったはず。これは悪魔的融合だ〜! 面白きことは良きことなり! と、藤原竜也なんだか有頂天家族なんだかわからないリアクションをしてしまうのは仕方のないこと。小説のアニメ映画化として、尺的にとっても綺麗にまとまって非常に観やすくて面白かったです。基本的には四畳半神話大系の人物たちが『サマータイムマシン・ブルース』を演じているような感じなのだけど、あの森見登美彦世界の京都なら、タイムマシンのひとつやふたつ、こんな不思議なことって普通に起こりそうだよなとも思います。僕もかつてはあの頃の大学生だったので、御多分にもれず『四畳半神話大系』の原作もアニメも大好きなんですけど、その世代ってたぶん今はもうまあまあ大人の年齢になっているわけじゃないですか。腐れ大学生ドストレートみたいな""と、四畳半が大好きな私たちが一緒に、いつかは大人になってしまうような、四畳半から巣立ってしまうような寂しさが今作には漂っております。もう夏の香りと混じってしんみりしてしまいましたね。ぜんぶ夏のせいだ。公開日が夏が終わった930日だったのは絶妙だと思う。とはいえ、いざ本編が始まって""が語り出せば、またこの四畳半に帰ってこられて嬉しいと感慨に浸ってしまうし、徐々に状況が整ってくると、そうそうヨーロッパ企画のこの感じたまらないなあと笑いと伏線の渦に飲まれるし、クライマックスには夏の時空系SF特有の物悲しさというか切なさを浴びてしまうし、最終的に明石さんが可愛すぎるとなるので最高でした。俺たちはみんな明石さんのことが大好きだよな。四畳半ではなんとなく小津がヒロインポジだけど、今作はしっかり明石さんヒロインなのでもう好きが加速して大変だった。未来の明石さんに幸あれ!

 

2022年もうひとつの”サマータイム”枠ことTVアニメ『サマータイムレンダ』


#01 さよなら夏の日
 amazon primeにて
超おもしろい!

 

 

9.『トップガン マーヴェリック』

全てのシーンから感じる「僕は今"ハリウッド映画"を観ているんだ! トム・クルーズ映画を観ているんだ!!! 」というエネルギーがやばい。今作を簡単に説明すると、トム・クルーズが超トム・クルーズしてトム・クルーズする映画だけど、観客はみんなトム・クルーズなトム・クルーズを観にきているのでもう大満足。感覚的には木村拓哉のドラマを見ているときと同じ種類の脳波がでてましたね。日本のトム・クルーズって木村拓哉だと思うし、往年の名作の続編として圧倒的最適解だったと思う。奇を衒わず、観客が求めている方向性のまま期待を上回る。なかなか出来ることじゃあないよ。映画館にMA-1を着こんだトップガンおじさまたちが集結したのは熱かったけど、そんな前作のファンだけでなく新規も巻き込める作品になったのはすごいし、そんな熱い王道物語を陳腐にしないのは、59歳になっても衰えぬトム・クルーズのスター性であり肉体である。もうそれは彼の生き様。懐かしの音楽と眩い夕陽を浴びたまま描かれるのは、空中戦、友情、恋、過去への敬意と今への視線。そうそうこういうのが観たかったんだと頷きながらも、そのベクトルで期待値をマッハで超えていく感覚。前回謎だったビーチバレーシーンも今作ではビーチフットに謎リメイクしているけど、ビーチがなかったらなかったで寂しいし、何なら意味を持たせているという具合が超有能。大人になったマーヴェリックが教官としてトップガンに戻ってきても、あの頃と変わらず指示を無視して上官に怒られる。変に丸くなったりしない、それでこそトム・クルーズ。いや「帰還したら話そう」という台詞がフラグにならずマジで帰ってくるのトム・クルーズだけだろ。フラグ建築士ではなく、ただの有言実行の男! え、生きてるの? と言いたくなる空中戦以降のあれは大目に見ましょう。そんな展開になることはわかっていたけど、わかっていたけど堪えられるワケない。こんな爽やかに泣いたのは久しぶり! 最高に胸熱! 楽しかった! しかし、こんな風なスター俳優が無茶なアクションするハリウッド映画なんて次いつ観られるかわからないよねと思っていた矢先にバイクで空を飛ぶトム・クルーズ。なんなの?

なんなの?

 

8.『恋人はアンバー』

エディとアンバー、同じ目的のために始めた偽装恋人…まさにラブコメの王道な導入なのに、こんなに辛いのは何故、辛くしたのは誰…。エディは自分がゲイであることを受け入れられず、アンバーはレズビアンであることを隠したい。そんなふたりが、家族や同級生にセクシュアリティを知られずに、平穏な高校卒業を目指す物語。舞台となった1995年のアイルランドは2年前まで同性愛すら合法ではなかった。そんな国の田舎町で、「自分らしく」を通すことがどれほど大変だっただろう。また彼らの親が、決して我が子を心配していないわけではなく、(不器用だとしても)愛は確かに注いでいるのは分かるのだけど、その行為が子を必ずしも救えるわけでもないということを当たり前に提示したのも真摯な作りだと思うし、エディとアンバーが同じ苦しみを抱え、偏見の辛さと痛みを知っていても、全ては理解しえないことが分かってしまうのも辛かったです。それぞれが抱える悩み、現実に横たわる性差、環境が与える考え方の違い。そしてその中で見つけた自分が自分でいられる居場所。そんな場所を見つけられたら、そのハグがどんな形の愛だっていいんだ。最後のああするしかなかったラストも、美談にせずああしないで済む世界に変えてかなくてはならないのだ。最高の“彼氏”エディを演じたフィン・オシェイは素晴らしかったし、アンバーを演じたローラ・ペティクルーも最高だった。あんなの好きになるに決まっているだろ。たぶん映画を観たひとみんなの恋人になったと思う。クラスメイトからの侮辱に下ネタで応戦して、ドヤ顔で偽装彼女を演じて、いきなり石を投げつけてくる。僕たちは、自分を気にかけてくれる、ちょっとアングラ趣味で風変わりだけど、自分の主義がしっかりしている子に振り回されながら(正確には引っ張ってくれながら)新しい世界に触れるのが好きな生き物なんだよな。あんな色味のダッフルコートを着たいし、アイリッシュなグリーンに髪を染めたい。願わくはとなりで笑っていて欲しかったし、それが難しいなら君は君の場所で幸せになってほしい。とてもいい映画でした……。あとエンドロールがとても短いのが良い。ただ僕に関して言えば、ラストでボロボロになってしまったので普通の長さじゃないと退出するまでに全然回復しなかったですね。エンドロールが足りねえ!

まだ間に合うよ!【上映劇場


7.『ちょっと思い出しただけ』

かつて浜崎あゆみが「君の事思い出す日なんてないのは 君の事忘れた事がないから」と歌っていたけど、思い出したってことは忘れてたってことで、思い出せるってことは忘れてないってことなんだよなあ…。たぶん好きだろうなと思っていたけど、やっぱり大好きな映画になった。マジで2022年の『花束みたいな恋をした』だったし、今年最高のタイトルバック映画だった。エモい...いやいや。もう大人はね、「エモい」に逃げられないんですよ。何事にも年齢は関係ない、関係ないけど、恋が終わったタイミングが20代か30代かってやっぱり重みが違うよね...。今作は現代から1年ずつ順番に池松壮亮演じる照生の誕生日の出来事を思い出す話なんだけど、その振り返り方が完全にある程度年をとったひとのそれ。去年の今頃ってどうしてたっけ? という具合に、ひとつずつ近いところから紐解いていかないと思い出せないし、このひとつずつ時系列の遡ることで、池松壮亮と伊藤沙莉の別れから出会いがどうなっていくのだろうという、ある意味答え合わせみたいな面白さがありました。まあだいたいこういうのって、明確な決定打なんかなくて日々の蓄積だし、失ってから気づくことがほとんどなんですけどねー。というリアリティが生々しくてよかったです。というか池松くんと伊藤沙莉の組み合わせが完璧。実力的にはもちろんのこと、相性良さそうなんだけど、たしかにこう夫婦として並ぶ絵が浮かぶかと言われると案外そうでもない感が絶妙だったかと。あと池松くんの夢破れてやる気が浮遊してる雰囲気と、河合優実さんの「私! この道で成り上がります!」という空気の対比が鮮やかなダンサー組もそれぞれ似合っていました。河合優実さんがかなりダンサー顔で好きです! 池松壮亮と伊藤沙莉と河合優実でキラキラするわけないし、主題歌クリープハイプでキラキラするわけ略。やっぱり大人の花束だった。あとそういえば、松居大吾監督って最後に唐突で突拍子ない展開で殴るイメージがあったけど、今作で封印していたのは何かあったのだろうか。大人になった...ってコト!?

ダンサー顔の河合優実さん(好き)

 

 

6.『コーダ あいのうた』

やっぱり物語はハッピーエンドがいいよ。青春と呼ぶには重すぎる葛藤に、明るく優しく温かく寄り添う愛。最高だったぜクソ兄貴! 思えば船の上で歌っているシーンで勝利確定だったのかもしれない。コーダで「あいのうた」と聞くと、響き渡れば~と口ずさんでしますアラサーですが、今作の主人公ルビーちゃんは、いくら口ずさんでも家族みんながろう者なので、その歌声や実力に気付くひとがいないという。導入だけだとなんかスポ根とか少年漫画が始まりそうな、隠れた実力者が人里に的な話だけど、そこに将来に迷うティーンの青春と、大人になることを求められた環境、ろう者搾取、ヤングケアラーの社会問題を並行して描く。さすがのアカデミー賞作品賞な映画。ただ間口は広く、かなりコメディな感じで笑えるシーンも多いし、手話でスラングっぽいのも下ネタもガンガン言う。フランス映画のリメイク元の作品は見れていないゆえに、例の演出が初見だったのはプラス加点に作用した感はあり、そこはとてもラッキーでしたね。世間ではろう者側がマイノリティでありながら、家族の中では健聴者が少数派で…というような、何事にも色んな面があるわけで、最後までそういった事象に"両側"から寄り添おうとする映画でした。それと今作の登場で、似たような演出があるとこれコーダ演出だなと思ってしまうし、映画でもドラマでもろう者を描く物語に求める求められる水準を一気に引き上げた感があり、これも名作が生まれることによる“両側”なのかもしれないな…(うまく言えてない)

思えば最初と最後が最高だからそりゃ名作

 

5.『春原さんのうた』

なんだか凄いものを観た。というのがいちばん近い感情かもしれない。5位にいれたけど、ちゃんと咀嚼できているか不安もある。わからないようでわかったような、わかったようでわかってないのかもしれない。原作となったのが小説や漫画でなく、短歌『転居先不明の判を見つめつつ春原さんの吹くリコーダー』という本作。今年いちばん余白を堪能した、全編マスク生活の映画だった。元が短歌というだけあって、歌を読み解くがごとく、その背景に想いを巡らせ、少ない手がかりを紐解くしかない。何があったかは聞かないし、何で泣いているかは言わない。確かにそこに“不在”が存在していて、でも優しく寄り添っている。今作に登場する窓は常に開いている。風が吹いて、カーテンが揺れている。開かれた窓と、閉じている心。だけど心に空白があってもお腹は空くし、どうしようも無く時は流れるし、時を経ても変わらないものもある。何でもない日々の積み重ね、思いの積み重ね。ただ日々は続くのだ。そんな日々をそのまま切り取りました〜みたいな風を装いながら、あのバイクの背中とか、あの夜の映写とか、とんでもない強度のシーンを唐突に投げ込んでくるからヤバい映画です。そして今思えば、すごいポスター詐欺でもあります。 あと、とにかくどら焼きが食べたくなる映画だから、手土産に持って昼間とかに鑑賞するとかなり風情がでるはずだし、食べ物ぜんぶ美味しそうなのもポイント高い。


春原さんのリコーダー (ちくま文庫 ひー19-3) [ 東 直子 ]

原作となった歌集 


4.『マイ・ブロークン・マリコ』

冒頭、永野芽郁が啜るラーメンのひとくちの量、ひび割れたスマホ、マリコのアイコン。最初の数分で、この映画は大丈夫だと思った。原作が好きだったのもあるけど、めちゃめちゃに泣いちゃった。もはやこの映画に泣いているのか、「マイ・ブロークン・マリコ」という物語に泣いているのかわからなくなっちゃった。ドクターマーチン欲しくなっちゃった。とてもよい実写化だったと思います。年齢的にも近い生身の人間が演じることで人物に血が通い、それゆえに傷口や繋がりが余計にジメッとした印象。85分という短さだけど原作(が凄まじいスピード感ということもあり)より疾走感は控えめになったが、その分余韻がすごいです。親友マリコの死を知ったシイノが、彼女の遺骨を抱えて過去を思い出しながら旅をする。本作はマリコの死んだ理由を探す話ではなくて、残された者、去ってしまった者にどう向き合い、いなくなった世界でどう過ごすのかという弔いの物語である。シームレスに回想と現在を行き来しながら、永野芽郁演じるシイノはマリコのことを思い出す。そして永野芽郁は赴くままに感情のスイッチをバチバチ切り替える。その緩急が永野芽郁の真骨頂という感じで好きでした。叫び、モノローグ。シイノの叫びは切実で、モノローグはどこか作り物っぽくて、それは自分と受け入れ難い現実を切り離して振る舞っているように見えたし、きっとそうするしかなかったのだ。たしかに、この物語の主人公に永野芽郁ちゃんは可愛らしすぎないか…?と思っていたけど、多分もっとハードボイルドが似合うひとはいるけど、そうするとブラック企業で若手社員やってる感や無茶して突っ走ってる感が薄くなるという難しさがあるので、やっぱり今に実写化するなら永野芽郁が主演で良かったなって思います。それはそれとして、特にクライマックスと高校生回想編の永野芽郁ちゃんは可愛すぎるのだけどな! あと中学生回想編シイノ役の佐々木告さんの煙草を持つ佇まいが格好良すぎるのだけどな!

長めの感想はコチラ↓

『マイ・ブロークン・マリコ』感想

 

 

3.『マイスモールランド』

良すぎて泣いた、辛すぎて泣いた。普段の僕なら、ラーメンは啜る派とか嵐莉菜さんがお美しいとかいつものノリの感想を言うだろうに、その前に思い出してしまうこと、考えてしまうことが多すぎる…。素晴らしかったです。埼玉に住む17歳のクルド人サーリャは同世代の日本人と変わらない高校生をしていたが、在留資格を失い当たり前だった生活が変わっていく。鑑賞中は、①難民申請が不認定となった現実が辛い、②嵐莉菜さんがお美しい の二大感情を基本軸として、それぞれせめぎ合いながら進みますが、社会派映画としてだけではなく、自分事として捉えられるように生活や青春部分もしっかり描かれていてよかったです。もう登場するクルド料理がどれも美味しそうなこと! 嵐莉菜さんが美しいこと! ビジュアルが結構エキゾチックなので、「自分のことを日本人だと言っていいのか分からないけれど、私は日本人って答えたい。でも、まわりの人はそう思ってくれない」というような主人公の感情を表現するのに説得力があります。劇中でも、主人公がワールドカップで応援する国を聞かれて、日本と答えられずに「ドイツ」と答えて、そのまま自身をドイツ人ということにするシーンがあり、まさに先日のワールドカップでの日本vsドイツ戦でこの映画のことを思い出したりしましたね。この映画はクルド人の物語だけど、主演の嵐莉菜さんを始めクルド人ではない。これは実際に難民申請中のクルド人を起用したときに彼らに危険が及ぶリスクを鑑みた結果、断念せざるを得なかったからだという。その理由こそが暗黒だけど、フィクションだからこそ届くものもあると思うし、そしてフィクションだからこそできる涙の伏線回収がたまらないし、本人に悪気はないけど加害性があるみたいな大人の描きかたがキレキレでエグい。誰もが藤井隆になってしまう可能性があるんだよな。そして、ラストの眼差しが超圧巻。「しょうがない」と割り切るには過酷すぎる現実。だけど、「しょうがなくない」と言い続けるしかない、そんな希望とも違う、覚悟を感じました。あと純粋に作品クオリティが高いというか、映像が綺麗とか、主人公が抱えるモヤモヤや取り巻く現状を説明台詞なくエピソードや会話で紡いで知らせるストーリーとか、あんな切ない伏線回収とか様々なポイントで技術力の高さを感じる。さすがの是枝チルドレン映画。あと、主人公の家族の空気感や距離感にリアリティがあるというか、自然だなぁと思っていたら、嵐莉菜さん以外にも莉菜パパ、莉菜シスター、莉菜ブラザーと家族勢ぞろいというガチの実家族でクルド人家族を演じる配役でした。そりゃ自然に家族役を演じられる...っていやいや、これ並みの高校生だったら、恥ずかしいとかなんか嫌とか様々な理由で家族と一緒に真面目にお仕事とか絶対したくなくて変な感じになりますからね。もうみんなプロでした。プロ家族。プロとして───。

受賞おめでとうございます! 


2.『ユンヒへ』

雪はいつまで降るのでしょう。岩井俊二『Love Letter』インスパイアで小樽を舞台にした韓国映画。白い吐息、たばこの煙。積もる雪、募る想い。冬の小樽が舞台だから、基本的に超寒そうなんだけど、雪が降りしきるときの独特の静かさがそのままスクリーンに映されているかのようで、まさに静謐という言葉がぴったりな、繊細なクィア映画であり、母と娘の物語だった。母にはかつて想い合っていた女性がいたようだから、何とかしてふたりを合わせよう!と行動する娘。韓国映画あるあるな、少し奔放すぎない? という奇天烈行動力あるけど憎めないみたいな若い世代が物語を動かしていく。またこの映画が優れているのは、叔母も上の年代から後押しする構図を用いているところですね。なかなか違う考えを受け入れにくい年代かとは思うのだけど、その痛みはわからないけど痛いことを自分ごととして受け止めるような叔母の姿に希望を見出したくなるし、世界の変化で今までの常識や考え方の変化に直面する者たちへのメッセージにも感じました。そしてそんなお節介が紡ぎなおした縁に涙が止まらない。クライマックスでの、ふたりのことはふたりしかわからないし、それを外野が知ろうとするのは野暮。と言わんばかりの潔い描き方に優しさが詰まっています。同時に、同性愛を肯定しながら若い年代のカップルを否定しない点において、否定すべきは恋愛そのものではなく恋愛規範の強制なのだというメッセージを、この映画と各登場人物との距離感に感じました。三世代の女性たちの世代を超える連帯と愛が、まるで雪を溶かすようにあたたかい作品だったけど、昨今の現状や雪のメタファーを考えると…。また雪は降るし、まだ雪は残っている。だけど、もう雪が自然に溶けるのを待ってはいられないのだ!


ユンヒへ(字幕版)
冬だし観よう!

 

1.『劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM [後編] 僕は君を愛してる』

生存戦略ーーーーーッ! いや特別枠にしようかなとも思ったけど、ピングドラムが1位に君臨するランキングが見たかったんだよな(俺が)。 総集編とか前編後編とか映画としてどうとか関係なく、ピンドラがある年はピンドラが優勝なんだよな。星野リリィ先生の描き下ろし入場者特典を貰った時点で優勝だし、公開日が決まった時点で優勝。いちどピンドラを見てしまうと、他の作品を鑑賞したときに結構な確率で「これピンドラで見たな」「これピンドラで言っていたな」と思ってしまうのよね。もう1位にするしかないのである。総集編と銘打ちながらもしっかり新規カットもあるし、その新規カットでめっちゃ泣く。あの前編の終わり方を思えば、後編が怒涛のズタボロ展開なのはわかっていたけど、こう構築するかという発見があるし、時間の尺的にどうしても枝葉のコメディっぽい部分は削られるので、シリアスの濃度が濃い! そして知ってたけど俺たちのやくしまるえつこ新曲がやばい。タイミングが完璧すぎた。てっきりエンディングで流れると思っていたから、「僕の存在証明」が流れた瞬間が本当鳥肌モノでしたね。存在証明ーーーーッ! 炎から脱する苹果ちゃんに、同じ方向に走る兄弟に泣く。もう泣いてばっかりですよ。映画館環境で観ると、金属音が鋭利さ増し増しになっていてマジ怖いし、反転する演出はいつになく壮観だし、トリプルHの歌の心への浸透力がすごい。そして再構築の先、映画的疾走感のクライマックスに最高に高まり、何よりラストはマジでヤバい。自己犠牲なんかじゃない、それは愛で包まれた。エッジの効いた演出や絵力で最初から最後まで感情を揺さぶり続けたからこそ、あの真っ直ぐなメッセージがめちゃめちゃ響いてしまうんだよな。放送から10年。10年経ったのに、TV版と比べてより力強く、より真っ直ぐにしてまで伝えたいと思わせてしまったここ10年を思うと暗い気持ちになったりもする。でもそれと同時に、この10年のあいだ変わらずに好きでいたファンの力もあってこうしてまたピンドラを観られているのよなと思ったりします。色んなことが変わったし、色んなことが変わらなかった。良くなったことも悪くなったこともある。でも、世界が如何様になろうとも、きっと何者かになれる。だってそれを知っているから。大きな愛を受け取った僕らが、何者にもなれない僕らが、きっと何者かになれる僕らがこの映画に言うべきことはただひとつ。「愛してる」だよね!


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お年玉で買おう!

 

2022年のマイベスト女の子についてはコチラからどうぞ

2022年の女の子

 

 

2022年もありがとうございました。2023年もなにとぞ! 

あけおめ!

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