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『劇場版 響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ』レビュー 感想 頑張るってなんですか 青春は熱いだけじゃないけどやっぱり熱い




(C)武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会


『劇場版 響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ』



スポ根モノから青春モノへ。映画版ユーフォ新作は、努力は必ず報われるという真っ直ぐな傾向が強い前作から(リズは別枠として考えています)より歪な様々な感情を描く作品へ。頑張るって何なんですか?


今回はフォトセッションあるかな〜と思って電源切らず機内モードにしていた私だが、画面に映った2人とその後の展開に思わずうおっと言ってしまいそうになる。そう。青春は部活だけではない。恋に勉強に大忙しなのだ。



もしも誰かが不安だったら助けてあげられなくもない
うまくいっても ダメになっても それがあなたの生きる道


今後の展開を予感させる歌詞である、PUFFYの『これが私の生きる道』が新一年生に向けて演奏される。昨年は、あんまり上手くないですね!と言われたけいおん部ではなく吹奏楽部だが、今年はしっかりと形になっている。全編にわたり、TVシリーズと同じ出来事(学校生活だから当たり前だけど)が起こるが、意図的に1年生のころを思い出す演出がされている。同じ事をすることで、違うことが際立つ。新入生への演奏は勿論、デカリボン先輩は髪を切った(かわいい)、夏紀先輩は最初からやる気ある(尊い)、滝先生の服装のバリエーションが増えてるとか。


いやなんでそこチョイスしたんだよって? ほら、デカリボン先輩改め部長はなんとなく心機一転!決意表明!とかで髪切りそうだし、滝先生も昨年は一年目だったし今年のほうが2年目の余裕あるかもしれないじゃん?そういう描かれてないけど、そうなのかな〜と思わせる描写がいいですね。ええ、勝手に思っているだけです。


もう少し真面目な話をすれば、変化によって成長を実感できる。サンフェスで自分の決意を固めた黄前ちゃんが、人の決意の背中を押す側の立場になってたりとか、かつてあすか先輩だけ演奏して下さいと言われ悔しい思いをした黄前ちゃんが、合宿で黄前ちゃんだけ演奏してくださいと言われてたりとか。あとは、そこそこの学校のはずの龍聖高校が源ちゃん先生になって急に結果を出すというのは、カリスマ教師によって覚醒した去年の北宇治なんですよね。今年はそういう学校に脅かされる立場になった、とか。


相談所として後輩たちの面倒を見てた黄前ちゃんが最後に対峙するのは、久石奏という(いやに丁寧な挨拶とかが裏を感じさせる)かつての黄前ちゃんっぽくもある後輩。そんな彼女は頑張ることの意味を問う。


頑張るってなんですか?この問いに至るまでの彼女の過去や、頑張ったけどオーディションに落ちた子、顎関節症になったかべちゃん先輩が、ある程度説得力を持たせてしまう。前作で努力は報われることを見せつけながら、その裏では報われなかったひともいる。今こうしていられるのは、単に結果が出たからで、結果が出ないときに、その過程を認められるのか。


才能もあって努力する人間は一握りで、大抵の人はどちらも持ち合わせていない。報われないかもしれない、認められないかもしれない。それでもなぜ努力するのか、頑張るのか。その問いに、黄前ちゃんは、かつて宇治橋を走ったときと同じように、校内を走りながら純粋で真っ直ぐな動機と強い覚悟を口にする。明確なゴールが決まっている麗奈に比べて、まだ目的地は決まっていない黄前ちゃんは、そんな気持ちのために頑張るのだ。「結果が出たから良かった」と捉えられる"過程"を、頑張ればなにかあるって、それは絶対無駄じゃない。と信じて。


今作のテーマ的に、ある程度覚悟していたとはいえ、北宇治は目標としていた全国には行けなかった。部長のデカリボン部長は、崩れ落ちるカットを挟んだのち、胸を張ってと部長としてスピーチする。マジエンジェル。それをずっとサポートして夏紀先輩マジビーナス。推し。いわば今年の大会では、努力してオーディションまでして心情的により実力勝負して、結果が出なかったケースであり、それはかつて久石奏が危惧していたケースでもある、結果が出なかった状況だった。その中で過程を無駄じゃないと思えたのか。それはきっとあの奏の台詞がアンサーだと思うし、ラストに似つかわしくないあの台詞を僕達が前向きに捉えられるのは、これまでの北宇治の物語を見てきたからなのだ。それは悔しくて悔しくて悔しくて死にそうで、今年の北宇治の最高の演奏だった。


まだまだこれからがいいところ
最後まで見ていてね



以下、備忘録。というかただの感想



・関係性が年月と共に進展する描写が好きなので、麗奈と塚本が2人で会話してるシーンがたまらない


・だから奏と夏紀先輩がハッピーアイスクリームするの、する仲になれたなと思って胸が熱い


・仮に続編あったとして、夏紀先輩がいない低音、さびしい


・「めんどくさいなー1年生」のなーが最高


・「とりー」も最高


・仲良い子といるときの語尾だらだらの黄前ちゃんが好き


・黄前ちゃんと奏の最初のシーン、ドアの枠を越えて、あっと戻れるのが黄前ちゃん距離感の魅力


・川島サファイア、キラキラネーム以外欠点が見当たらない


・『リズと青い鳥』万感の想いがある


・演奏シーンで、希とみぞれが映ると、リズを見た僕たちは込み上げてくるものがあるし、ユーフォ3人が並ぶと頑張れ!と思ってしまうけど、描かれてないだけで、きっと、どのパートにも大なり小なりそういう物語はあって、北宇治以外の学校にもそういう物語はあるのだ。そう考えると、ひとりひとりが映る度に、その背景に想いを馳せてしまうな。

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