2021年映画ベスト10
2021年の劇場新作鑑賞本数は70本。大谷くんのホームラン数は越えましたが、邦キチ池ちゃんの85本越えはならず。池ちゃん指数82.3%となりましたね。ただある程度絞ったことで全体的に「これは失敗した~~」みたいな経験がなく、満足度が高い1年だったかも。ということで、今年のまとめ、今年のうちに!
11~20位
70本のうち20本も紹介すると選りすぐりというわけでもないけど、どれも良かったので見てくれよなッ。カウントダウン!
20.『フリー・ガイ』
19.『偶然と想像』
18.『サマーフィルムにのって』
17.『イン・ザ・ハイツ』
16.『君は永遠にそいつらより若い』
15.『すばらしき世界』
14.『彼女が好きなものは』
13.『草の響き』
12.『由宇子の天秤』
11.『光を追いかけて』
正直10位を決めるのは相当迷いまして、16位くらいまでは実質10位です。箱根駅伝シード権争いさながらの激戦だった。
10.『ひらいて』
9.『猿楽町で会いましょう』
ある意味で“花束みたいな恋をした”映画だったかもしれない。が、いやいやそんなことはない、超暗黒でしたよ。ポスターの楽しそうな画像とタイトルのフォントに騙されてはいけない。なんかあれでしょ若かった頃の恋愛思い出してエモだなーってなるやつでしょみたいなもんではない。金髪の金子大地格好いいしチェックしてみようみたいな軽い気持ちで見ると痛い目に遭います。ただ金髪の金子大地はめちゃめちゃに格好いいです。何なんあの男。そして今作は、そんな金髪カメラマン金子大地と、ワイルドインテリアデザイナー栁俊太郎という、いやどっちも格好いいけど多分どっちも好きになったらダメな男!
の間で揺れ動くヒロインの物語でしたね(違います)。 恋のはじまりを、絵に描いたような幸せな日々を描いたチャプター1を経てからが、この物語の本番であり、ゾッとするような恐怖や苦しさから、この映画は逃がしてくれません。エモに逃がしてくれよぉ。そして主演の石川瑠華さんが、男2人に負けないくらいに「これ、好きになっちゃダメな子だ」と思わせる言動で超強い。そしてビジュアルがこう絶妙にいまいちブレイクしきれない読者モデルという感じで超生々しいんだよな。夢を抱き、才能を信じなくては生き残れない世界で、重ねた嘘は誰のためだったのか。そして好きなひとの嘘を、歪んだ関係性をどこまで好きという気持ちだけで信じきれるだろうか。もしかしたらこれは、彼の彼女の生存戦略――。全員クズやんけと片付けるのは簡単だけど、誰も正しくなくて歪で痛い彼らを嫌いにはなれないのは、僕らも心のどこかに同じような孤独や寂しさや経験があるからかもしれないですね。つら!
猿楽町で会いましょう
8.『プロミシング・ヤング・ウーマン』
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7.『ノマドランド』
アカデミー賞作品賞。いやあすごい映画でしたね。アクション大作ではなくてもIMAX推奨とはまさにこのこと。超没入して、そこで生きているかと思った。定住を持たずトレーラーで放浪しながら生活を送るノマド民の話と聞いて、勝手に経済格差を描いたシリアス社会派と思いきや全然違う感じの手触りで、言うなればこの映画は彼らに同情も糾弾もしない。そこに、ただ、生活があるだけ。それをフラットに描いていく。ドキュメンタリーっぽい雰囲気が相まって、どんどん現実との境界線が曖昧に溶け出す感じは凄い。わりとどのシーンでも葉加瀬太郎の「エトピリカ」流すと、生活のプロの密着取材に見えるくらいにはドキュメンタリーです。フランシス・マクドーナンドはさすがの雰囲気でそこに生活しているみたいに見えるし、共演者がガチのノマド民なので本当にそこで生活している。それにしても、全編通して生きている臭いがする映画だったし、画面から伝わるポジティブもネガティブも含めたエネルギーの放出量がすごい。それは大自然のものなのか、ひとが持つものなのか、たぶんどっちもかもしれないなあ。あまりにカラっとしているので、幾つか明るい気持ちになっている感想を見かけたけど、個人的には結構孤独感が胸に迫ってきた印象でした。終わることができるから終わりなき旅に思いを馳せるのであって、終わらせられない終わりなき旅は本当に幸せなのか、と考えてしまいますね。だって終わりなき食べ放題の『帰れま10』めちゃめちゃつらそうじゃん? 意地と誇りと自由が入り混じった「ホームレスではない、ハウスレスなのよ」は圧倒的に名言だし、そのセリフを引き出したギャルが可愛かったです。
6.『まともじゃないのは君も一緒』
この映画をまだ見てないなんて「もったいないね!」 個人的にこの台詞にすごいハマって多方面で使用していますが、まだ気づかれたことはありません。むしろ単にまともじゃない奴と思われている可能性があります。朝ドラヒロイン清原果耶と、そのひとつ前の朝ドラに出演してた成田凌の掛け合いが楽しい、サクっと見れる軽やかなラブストーリー。いや、ラブストーリーなのか? 清原果耶ちゃんが予備校講師である成田凌に勉強を教えてもらい...はッ!これは俺たちの菅波?? と思いきや、今作の清原果耶ちゃんは全然勉強しないし、なんなら成田凌に教える側です。いや、教えているのか? 『おかえりモネ』とは違い、わりと楽しそうに年上にズケズケ言う清原果耶ちゃんが観られる良作。こっちの方向性の清原果耶もいいよね。成田凌は前からイケメンなのにどこかイラっとするところが魅力だと思っていたんだけど(褒めてます)、今作はイラっ強めのキャラなので、まあまあの頻度で「この男…!」となります。ただ、普段モサい私服を着てたひとのスーツ姿のギャップにグッとくるというシーンを成田凌でやるので、いやそりゃスリーピーススーツも喜んでるぞという具合に絵になり、あのシーンは完全にメンズノンを感じました。ズルい。とはいえ、最終的にこのふたりのことを大好きになるので、素晴らしい設計ですね。というか、作品自体が傑作というより大好きと言いたいタイプである気がしています。もっとも、僕はこの好きを定量的に言えないんですけどね――。それに、このふたりだけでなく登場人物がみんな“まともじゃない”のだけど、不快感は感じさせない絶妙なラインでとても良かったし、なにより、講演をする小泉孝太郎が小泉進次郎みたいで、最低で最高だった。
5.『花束みたいな恋をした』
映画としてどうこうというより、めちゃめちゃ刺さってしまったから仕方ない。今回は5位という位置づけでランクインだが、映画について話したとか映画からの影響を受けたとかを基準にしたら多分優勝したと思う。多くのサブカルたちと、かつてのサブカルたちをメタメタに刺しながら過ぎ去っていった映画だ。コンビニエンスストアで350mlの缶ビールを買う、きのこ帝国を聞く、宝石の国を読む。その姿を見て、これは俺の話をしているのか? 俺は本当は菅田将暉だったのか?
と思ってしまったのは僕だけではないだろう。つまり劇場には多くの菅田将暉たちが集まっていたことになる。しかし、なぜ菅田将暉である俺たちの横には小松菜奈がいないのか。責任者はどこだ、裏切られたぞ。てっきりエンディングテーマだと思ってた『勿忘』が流れなかったくらいに裏切られた気持ちである。菅田将暉演じる麦くんと有村架純演じる絹ちゃんが運命的に出会って恋をして別れるまでの5年間。そんな今作は、簡単にまとめると「花束はいつか枯れてしまうけれど確かにそこに花は咲いていたんだよ、好きが変わってしまっても好きだった事実は消えないんだよ」という話かと思うのだけど、個人的には、同族嫌悪的側面+自分がかつて選ばなかったものを、このふたり大事そうに拾ってきて辛かったです。いやそりゃあね、イヤホンを分け合ったりしないし、一緒に漫画読むなんて効率悪いことしないし、金を払って買った楽しみにしていたライブをすっぽかしたりなんてしない。でも、そうしたことで得られる日々もあったのかもと思わせるのが憎いところ。そしてそんな羨むような美しい日々が描かれているからこそ、かつての恋や、恋にすらならなかったものに、まるでこの映画から花束を贈ってもらったようで、清々しい気持ちになるんだよな。僕は別れてしまう、パズドラにしか興味を持てなくなってしまう等のつらエピソードだけでなく(つらいが)その先の、人生賛歌的な部分を信じたいですし、実際にこの作品のことを年末に振り返っても、案外辛かったシーンは覚えていなくて、楽しかった日々のシーンばかり思い出しています。もう、関わったひとみんなに手を振って進んでいきたいです。手を振る相手がどれだけいるのか?
という質問はしないでくださいね~~。しかし、どこかで見かけた「麦と絹はこの映画のこと多分好きじゃない」というのは本当にそうだと思うし、多分この映画を好きなひとってこのふたりのことそんなに好きじゃないよね?
特に麦。勝手に他人の髪の毛をドライヤーで乾かすひとにまともな奴はいません!(偏見)
勿忘
4.『17歳の瞳に映る世界』
いや凄まじい作品だったし、ふたりが並んで歩いているだけで映画になるんだなって思った。望まない妊娠をしてしまった少女が、中絶のためにニューヨークへと向かう旅。アメリカは州によって中絶できるかできないかが違うらしい。台詞を抑えたドキュメンタリータッチにも感じるロードムービーだが、彼女たちが抱える“重すぎる荷物”思うと胸が痛むし、彼女たちを見守る女性たちの優しさを信じて見たくなる。ティーンが持つ等身大の眩しさと未熟さ。なにより、男性が持つ無自覚な加害性がしっかり描かれている印象で、ゆえに僕は正直なところ気軽に傑作だと言いづらいわね。今作はテーマに対して、真摯でシビアというか、いい話風にもしないけれど、ちゃんと配慮もされている(直接的な描写があるわけではない)。わかった風にしない距離感が絶妙だし、とにかく良いことも悪いことも視線で語る、まさに瞳の映画とも言えますね。語らないのに絵で語るみたいな。それに、やっぱり誰が妊娠させたのか、というのが、どうしても気になるとこかと思うのですが、そこに対するアプローチがわりと今作の本質という気もしています。あとは、このふたりの空気と関係性が素晴らしい。仲が良いって、必ずしもたくさん会話するだけではないよね。辛いときにそばにいてほしいひとは、話して楽しいってタイプのひとより、話さなくても大丈夫みたいなひとかもと思いました。同時に、真の意味での「寄り添う」とはどういうことかを考えてしまいます…。原題は『Never Rarely Sometimes Always』なんですが、映画の途中でタイトルの意味が分かったときが非常に辛いです。公開時期的にも『プロミシング・ヤング・ウーマン』でセットで見て非常に良かったのですが、配信もちょうど両作とも1月7日かららしいということで、2022年にぜひに。薦めておいてなんだが、年明けから重いな!
17歳の瞳に映る世界 [DVD]
3.『ハニーレモンソーダ』
初めて予告編を見たときは、こんなにハマるとは思ってなかったし、むしろ絶対ダメだろくらいに思っていました。めちゃめちゃ素晴らしい少女漫画実写化だったと思います!
もう登場人物みんな大好きすぎるんだよな。みんな幸せになってほしい。とはいえ、やっぱり今作モノローグなしで駆け抜けた、主演であるラウール様と吉川愛様に大きな拍手を送りたいですね。アラサーおじさんの僕ですが、もうしゅわキュンがとまらない。ひゃーーーラウール様!
なんなのあの頭身、なんなのあの顎のライン。基本的にラウール様はそもそも頭身がマジで少女漫画仕様なので非現実なイケメンを演じていても、彼自身が非現実感あるので逆にリアリティがあるのが最高。そして演出として来るぞ来るぞ...と溜めてから名言が来るんですが、声がハスキー気味なのか吐息多めなのか、とにかくまるでASMRかよって感じがもっと最高。吉川愛様は本当はめちゃめちゃ可愛いのにちゃんと絶妙に地味でありつつ親の愛をちゃんと受けて育った感が伝わるのが素晴らしく、これは吉川愛の衣装決定した時点でたぶん勝利で、白ベストは完全に解釈の一致だった。いや、この令和の時代に、少々俺様系のイケメンってどうなの?
という気持ちもあったのだけど全く問題なし。いや最初は少々不安になるけど、途中から慣れるし好きになっています。ふたりの出会いは、ラウール様が吉川愛様にレモンソーダをかけてしまうところから始まるんですが、そこで「おもしれー女」的な展開ではなく、秒でラウール様が謝るんですけど、その時点ですぐ謝れるのは信頼できるひと!
となりますね。というより、ストーリー的にも、全然主従関係とか依存というわけではなく、このふたりが双方向に与えてそれを返すことで、同じ目線で立場になっていくというプロセスが丁寧なので、全く問題なし。なにより、第一印象で感じた俺が守ってやる的な物語ではなく、助けてほしいときに他人を頼ることが本当の意味での自立みたいな話をしているので。(元カノエピソードのときに依存ではダメみたいなことをちゃんと伝えるのがお上手。いやこの元カノである堀田真由も最高だし、ライバルと書いて友達みたいな関係性が尊すぎるんだよ…と、そこまで語ると文字数が増える一方なので割愛)だからこそ、ラウール様の最後の決意表明が“でも俺は...”なのがたまらないんだよなッ!
あとはとにかくキリンレモンをラウール様が飲んでるんだけど、何本も買っているのかぬるくても飲んでるのかは気になるところだし、いやさすがにここではキリンレモン飲まないだろというシーンで生茶が登場した時は結構笑いました。
2.『街の上で』
うおおおおおおおお! 俺の! 中田青渚!!!!! はい、ということでね、中田青渚さんに加えて、穂志もえか、古川琴音、萩原みのりが共演ときたら好きになる以外ないですね。下北沢を舞台にした作品を、みたいな企画から始まったらしい今作は、本当に下北沢映画であり、最後まで下北沢から出ない。下北沢で完結する超下北沢映画だし、とにかく登場人物みんな下北沢にいそう感がすごい。主役の古着店員である若葉竜也や、美女4人はもちろんのこと、脇役やちょっと登場するひとからも感じる下北感。そういえば、今作には全然スーツのひとが登場しないんだけど、言われてみれば下北にスーツのひとって見ないなあって思うし、登場する男性の長髪率は異常。話としては、古着屋店員に美女が代わるがわる登場して、男はそれに翻弄される話(雑)なんですが、張りつめているとも緩んでいるともどこか違う、独特な空気が心地よくて、彼らの日常をまだまだずっと見ていたくなる。そして彼らの間に流れる気まずさや、むずがゆさに、ああこれ自分でもあるわ...とひたすら苦笑いをしたり、大きく息を吸ったりしてしまいました。変わりゆく街を舞台に、そこで時を刻んだ物語。ちょうど下北沢は駅開発をしていて、まあ昔ながらの風景は変わりつつあって。でもこれまでも、この先も、街もひとも変わったり変わらなかったりしながら生きていくんだなと思わせる映画でしたね。よくよく考えると、登場人物たちは大きくは変わっていないというか、特別成長したみたいなところはないし、慣れ親しんだ世界から飛び出したりしないかもしれない。そんな日々を生きることは、滑稽で情けなくて、でも愛おしくてドラマチック。なんというか、人生を変えるような一本ではないかもしれないけど、胸の奥にしまっておきたいような作品に。まあ、あとはとにかく城定イハを演じた中田青渚さんですね。関西弁の破壊力。間違いなく2021年のマイベストヒロイン。恋バナなんていくらでも聞くので、グレーのTシャツを着てふらっと現れてくれ…
1.『あのこは貴族』
即決です。なんなら見たときから、この作品が1位になるんだろうなと思っていました。都会で暮らすお嬢様の門脇麦、田舎から上京して東京に憧れる水原希子…いや、逆じゃない? そう思っている時期が僕にもありました。
いや本当に素晴らしかったです。そもそもお金持ちだから楽しそうだと最初に思ってしまうところから、階層差ゆえの先入観があったのだと。よく考えると、門脇麦が行き詰まった役を演じるのは割とスタンダードな配役ですからね。今作も門脇麦は群青色みたいな空気がよく似合うし、門脇麦を群青色にしてしまう金持ち家系の圧の掛け方が強すぎてヤバイ。今作のポスターには「同じ空の下、私たちは違う階層を生きている」というコピーが書かれているとおり、この映画にはいろいろな違いがあって、それは地方と東京だったり、内部と外部だったり、男と女だったりするわけだけど、違う位置で生きていても同じように悩んでいたりする。それを全編通して美しい絵と対比を用いながら丁寧に描いている印象です。例えば、移動手段ひとつとっても、徒歩、自転車、自動車、タクシーとか色々ありますが、それぞれの登場人物が何を選択しているのか、とかね。もうそのシーンそのシーンでの登場人物の状況というか、関係性が、画面からいちいち綺麗に伝わってくるし、どの瞬間にもきっと意図がある。そして対比を続けることで、差異だけではなく、同じ部分も浮き上がってくるのだ。階層を描きながらも、分断も対立も描かない。でもその溝が埋まるとも言わない。たしかに僕も4000円のアフタヌーンティーを嗜むひとには出会ったことはないけど、きっとどこかにはいるのだろう。そんな風に至るところに見えない壁があって、きっともう出会うことはないかもしれないけど、だからお互いを認め合う距離感から、交差した地点で手を振るんだというのがもう好きすぎる着地です。そして、門脇麦と水原希子をそれぞれ支える友人の存在が本当に最高。だからこそ、願わくは彼にも...とは思ってしまうけども。あと、あまりに映画が素晴らしかったので原作小説も読んだのだけど、このシーンも映像化して見たかった気持ちもありつつ、あのシーンがオリジナルだったのか! という気持ちになります。原作への解釈と抽出度が完璧でした。超優勝!『あのこは貴族』
— オガワヘヴンリー (@k_ogaga) February 27, 2021
めちゃめちゃ良かった…!東京のお嬢様と地方出身者って主演2人の配役が逆じゃない?と思ったけど全然そんなことなかった。門脇麦が絶対良いのは分かっていたけど、水原希子があんなに最高だったとは。あの自由を纏う眩しさに彼女も彼も僕らも惹かれてしまうんだ#あのこは貴族 pic.twitter.com/9Bb1dBG1bA
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