『ハニーレモンソーダ』
村田真優『ハニーレモンソーダ』原作は途中まで読んで結構面白かった記憶があります(今はちょっとうろ覚え状態)。なんというか、治安の悪い『君に届け』みたいな感じですよね?ベタで王道なストーリーということです。ぼく、ベタな青春モノだいすき!
ハニーレモンソーダ 1 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)
自分に自信がない友達がいない主人公が、ひょんなことから学校一番のイケメンと出会い…というフォーマット。これは安心安定の構図。そして例のごとく、イケメンはキラキラ台詞を言い放つのですが…いやいやこれ実写大丈夫なのか?と予告編の時点で思ってましたよ。ええ。
もうね、前言撤回。手のひら返し。手のひらトリプルアクセルですよ!超よかったね!こういうのが見たかった!欲しかったものがジャストで届いた感あります!
わりと少女漫画実写化映画のこと嫌いじゃなくて見に行ったりしてるんですけど、さすがに最近はなかなかフィーリングが合わないな…と思うことも少しずつ増えてきていて。まあ、それもそのはず。だってもうアラサーおじさんだからな!単にターゲットではないという話である。だけど『ハニーレモンソーダ』はハマった。ハマったねえ。ということで、自分なりにどこが(自分にとって)良かったのか、ということを考えてみると
1.主演ふたりの説得力
2.最高の2番手の存在
ここに尽きると思うわけですね。
1.主演ふたりの説得力
基本的に多くの少女漫画って、主人公の女の子がわりと読者である女の子たちが共感できるようなキャラで、そこに夢みたいなイケメンが登場する構図じゃないですか(偏見)。そんなシンデレラストーリーの実写化は、漫画だとなんとなく許容できることも、生身の人間が演じると途端に「いやそんなことしねぇだろ」となってしまうのが大きなハードルだと思っていて。だけど今作の吉川愛さん、そしてラウールくんのふたりは、それぞれ別のアプローチでキャラクターに説得力を持たせていた気がします。吉川愛さんが素晴らしいだろうなとは思っていたけど、まさかこんなにラウールくんがハマるとは...いや、これはもうラウール様と呼ばせてくださいッ!ラウール様!
『ハニーレモンソーダ』
— オガワヘヴンリー (@k_ogaga) July 11, 2021
吉川愛さんのことを吉川愛様…!となるのは想定内だったんですが、ラウールくんのことをラウール様と呼ぶようになるのは自分でも予想外ですね。別に台詞が自然とか演技上手いみたいな感じではないんだけど、とにかく華もあって影もあるのが良いですね…#ハニーレモンソーダ pic.twitter.com/3a0K3ckPoS
三浦界くんを演じたラウール様については、個人的に初めてちゃんと動いてるとこを見たんですけど、その、背が、高いですね…! 背が高い!
男の中に混じっても背が高い。Wikiで調べたら188cmとのことで、いやもうそれ阿部寛のサイズ感じゃん。普通の高校生でこのサイズ感はなかなか出会えないので、その時点で非現実感あります。頭身が完全に少女漫画仕様です。え、つまりあの壁ドンのあの角度、俺がドンされてもあんな感じになれそうってこと?すごくない?(?) 随所にはさまれる下からのアングルで映る顎のラインの美しいことよ。それでいてエキゾチックで中性的な印象の顔立ちなので、等身大の高校生感が全然ない! 骨格レベルで住んでいる世界が違うことが伝わっちゃう! ミステリアス! 三浦界くんっていうのは、なんかもう何考えているかわかんない存在そのものが神秘みたいなところが魅力なので、庶民の世界から離れたら離れるだけ三浦界に近づいて超ピッタリ。
あとはメタ的な話をすると、視聴者側(僕)が「こんなキザなセリフだけどジャニーズだったら言うかもしれないな」と勝手に思ってることも大きいですね。普通の人は「俺ね、空飛べるんだ」とか言ったら「は?」と返されるどころか病院を進められるか色々なモノを失いかねません。そんな台詞を納得させてしまう色気と説得力。この時点で大勝利ですね。名言が飛び出す前には、来るぞ来るぞ感があるのですが、ストーリーが進むとスーパー超人に見えた彼にも抱え込んでいることが見えてきて...ハスキーな声が悲しみを誘います。正直なところ、台詞回しが自然!演技上手い!みたいな感じではなかったんですが、本人のパーソナリティによる佇まいがキャラにマッチして最高。どこか儚さもあり、イチャイチャムーヴのときは子供らしさもあり。クールな振る舞いが嫌らしくない。とにかく映るだけで華があって影があって良かったですね…。というかこの色気で18歳なんすか。そりゃ子供らしさあるわ。え、何なん…
反対に羽花ちゃんを演じる吉川愛様は、普通にしていると、どうしてもどうしても可愛すぎます。なにあの陽なエネルギー、なにあの目力。なんであんな地味な子が!?的な展開になるには、顔の造形が美しすぎる…。だから、そこを確かな演技力と、衣装、あとは友達の雰囲気との相対性とかで美人度を抑えにいったアプローチだった印象。普通にしてたら美人サバサバ系(それも見たいな!) になりそうなので、ちょっと目の雰囲気を優しめにしたり、声が可愛らしい感じにしたりとか。あとは瞳の説得力。あんなに瞳が大きかったらもう感情詰め放題。瞳とシースルーバングから覗く眉で気持ち全部伝わってくるので、いや涙美しすぎだろ…みたいなことより先にちゃんと感情が前に来る。ただ涙は超美しい。
衣装については、別にダサくはないけどあの学校では地味、となる絶妙なラインで素晴らしいですね。白ベストを着てるのを見た時に、完全に解釈の一致…!となりました。ちょっと野暮ったく見える良いルック。友人の芹奈とあゆみちゃんが色味のあるシャツとか腕まくりとか髪型も毛先巻いてたりしてザ・お洒落モテJK!という着こなしなので、相対的にいい感じに地味になります。あとは、定期的に映る羽花ちゃんの部屋から伝わる家族から超愛されて育った感。部屋に飾ってある目標や押し花とかお弁当とか、いわゆるメジャーな女子高生とは違うけどいい子なんだろうが伝わる設定も良かったですねえ。育ちが良さそう感は、ちゃんと上履きを脱いでマットに座るところとかにも出てます。余談ですが、友達ふたりを薄めの美人にしたのはやっぱり系統が被らないという意味でヒロインが特別感あって正解だったと思う。しっかし、みんな可愛いな!
2. 最高の2番手の存在
えー。すこしネタバレをしますと、この映画はラウール様と吉川愛さんがくっつきます(知ってた!)それは必然として。体感で全編の60〜70%くらい三浦界と羽花ちゃんのシーンで占められている感じだけど、そんなふたりの周りを固めるひとも魅力的。なかでもライバルと書いて戦友と読むみたいな存在になった芹奈がお気に入りです。まず名前がモテそう。よくライバル同士がバチバチにやりあったりするタイプの話もありますが、本作での対決は正々堂々と真摯に向き合っているところもポイント高い。
芹奈は登場のときから主人公を敵対視するわけでもなく、周りへの配慮ができつつ一貫して芯の強さがある気持ちの良い子ですね。そんな人間としての気高さ、強さを見せるひとが見せる不安と覚悟、そして強がりが見える瞬間がたまらなく好きです。余裕があるように見えて、ちゃんと必死に界のことが好きなことがわかるのがとても好きです。そんな芹奈を演じる堀田真由さん大好きです!
吉川愛さんとは違う方向性の美人。全体的にスラっとさらっと系。青春系作品ではなんとなく友達役が多い印象がありますが、そういう役柄キャリアの積み重ねなのか、明と暗の匙加減が絶妙。いいひとだけど安パイに留まらない存在感。いいスパイスになっておりました。
と、まあ。つらつら書きましたが、前述のとおり70%くらい登場する主演ふたりに乗り切れればとっても楽しめるし、ちゃんと乗りやすい設計が組まれてるかと感じました。あとはこの作品はとにかくモノローグが全然なくて、では心の声を何で補うかと言ったら表情とか佇まいなわけで。見事に演じきったふたりには大拍手を送りたい。いや本当に予告編の不安が嘘みたいに弾けて消えていく、話が綺麗にまとまっている、だけどちゃんと少女漫画感もあり胸キュンもある超良作だったよ!
正直なところ、若い女性だらけの映画館に行くのにちょっと抵抗があるひともいるだろうし、こんなご時世だけど、少しでも興味があるなら頑張って見に行ってくれ。一歩踏み出す勇気!
せっかくなので、本編について感想というか好きポイントも(ネタバレあり)
依存から恋へと、そして自立へと変わる物語だったかと思います。初期の羽花にとって、初めて手を差し伸べてくれた、挨拶を返してくれた界はどうしたって特別な存在になるのは仕方がないこと。でも、保護者でも憧れでも恋にはならないわけで。自分が変わって世界が変わって、また自分の気持ちが変わっていく。依存から自分で立ち始めて、恋に変わっていく。
この映画がうまいのは、最終的に羽花が界から貰ったものを界に返すことで、伏線回収の心地よさと同時に、結果的にふたりが同じ行程を経て同じ立場にたどり着く繰り返しの物語だったというところ。「空飛べるんだ」も、「〇〇係だから」も、好きな相手に大切なことを伝えるために自転車を精一杯漕ぐのも、全部繋がっている。自転車に乗るのも、どちらも背中を押すのが友人たちというのも、一方的な恋物語ではない、双方向の立場が同じ位置から想い合うことになるのも良いです。告白するのに全力で自転車漕いだから髪の毛ボサボサなのに気にせずちゃんと想いを伝えるところも良いです。
告白と言えば、夏祭りで羽花が芹奈に界への気持ちを告白したのも良いですね。あの一連のシーンは本当に好きで、そもそもちゃんと界が羽花のことを探しているというのから熱いんですけど、あんな胸キュンなことを言われたあと、好きな気持ちをちゃんと認識したあと、その場から離脱するなんてできます?
それこそ、普通そのまま一緒にいたくなるところを、ちゃんと最初に誘ってくれたあゆみへの、同じひとを好きになった(しかもその前に気を遣って嘘をつかれた)芹奈への誠意で戻って探しに行く。そして芹奈も羽花の気持ちがわかるから逃げずに”正々堂々“頑張ろうと告げる。この手の作品でありがちな恋敵同士がバチバチな描写が個人的に苦手なので、こういう展開は好き。恋だけじゃなくて友情をちゃんと大事にするあたり、友達が今までいなかった羽花の”今“を大事にしたいという気持ちが伝わってきます。
あと個人的に好感なのが、物理的な暴力や喧嘩シーンがほとんどないところ。冒頭のサイダーシャワーと芹奈の豪快ハイドロポンプの2つのシーンで、どちらも羽花と界の、羽花と芹奈のファーストコンタクトのシーンでもあります。ここはやっぱり水によって、これまでの日々が洗い流されるというか生まれ変わることの暗喩なのだろうか。本記事冒頭で治安の悪い『君に届け』と言いましたが、基本的には言葉で煽ったり釘を刺すものの、手は汚さない。原作よりかなり大人の対応をしているかと思います。終盤、悟が界の元を訪ねたときも、血気盛んな男なら首元を掴んだりしそうなものの、そういうところはちゃんと一線を引いているあたりにも現代らしさを感じますね。
あとあと、悟あゆみペアは本当楽しそうでよい。学校のパンフレットに載せたくなるような高校生活だな? まあ個人的には友達以上恋人未満の心地よさ大事にしたい民なので、おっ、いくんか?
いくんか! と戦況を見守りましたが。もしも恋人じゃなくなっても友達でいて欲しいなと思う。それこそ界と芹奈みたいに。恋愛としてはうまくいかなくても、どこかにひととして好きな部分があるひとと交流がなくなっちゃうのって寂しいと思うから。そう考えると、恋敵とも元カレともフラットに関係性が続く芹奈のスタンスがやっぱり好きだな。(芹奈のこと好きすぎだろ)
羽花と界、ひとつの出会いがそれぞれの自分を、世界を変えていく。だけど相手を思うほど本当の自分を相手が受け入れてくれるだろうかと悩むことになる。そこをブレイクスルーするのは、変わりたいと願いながらも、変わらずにいてくれる相手を信じること。それは夏祭りの告白も、昼の告白も、夜の告白も。その一歩を踏み出す勇気で、きっと僕らは空を飛べるはずなんだ。
しかし全面協力とはいえ、キリンレモンのサブリミナルがすごい。風邪ひいている時さすがに家では飲まないだろうと思いきや、冷蔵庫から生茶がでてきてすごい。
キリンレモン 450ml PET ×24本
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