2019年もあとわずか。今年のまとめ、今年のうちに! ということで、これが僕の2019年映画ベスト10だ!
10.『愛がなんだ』
胸にそっとしまっておきたい作品もあるけど、今作は今年いちばん見終わったあとに安い居酒屋なんかでやんや言いたくなる作品ではないだろうか。優れた映画、好きな映画の基準はひとそれぞれだが、"映画が日常がに与える影響"を観点に言えば、この映画を見た僕が何をしたかって、その日の帰り道コンビニエンスストアでスリーファイブオーエムエルの金麦買いましたからね。もろ影響うけまくり。でもたぶん3人に1人は買ったと思う。アップリンク吉祥寺では金麦売ってたんだっけ?いいや私はプレモル派もいたかもしれない。もし家に成田凌いたら追いケチャップは確実にされてた。実際はひとりでシャンプーであの髪型やって虚しくなった。幸せになりたいっすね…。岸井ゆきの(かわいい)演じるテルコはマモちゃんのことが好きだけど、マモちゃんはそうは思ってないみたい。「好きなひとは私のことを好きじゃないみたい」だけ見れば咲坂伊緒先生の少女漫画の始まりみたいなのに、まったくキラキラせずヒリヒリしかしない、もうやめて!しか言えない。テルコの周りも周りで仲原という男が親友葉子にぞんざいにされながらも尽くしている。愛とは尽くすことなのか、執着なのか。登場人物みんなの言いたいことが分かるし分かんない。共感できるし共感できない。嫌なところたくさんあるのに嫌いになれない。外から見てもそうですから、当人達は嫌いになんてなれるわけないんですよ。なんで、どこが、好きになったのか分かんないけど好きなんですよ。正論なんてわかってんだようるせえばーか。はあ、金麦飲も。
9.『ブラインドスポッティング』
オバマ前大統領がベストムービーに選んだみたいな記事を読んで、なにオバマさん結構サブカルなの? って思ったりもしましたが、これは良作、オバマに感謝。オークランドに住むあと3日で指導監督期間が終了する黒人コリンと、そんな友人の状況を全然気にせず振る舞う白人マイルズの幼馴染の2人はずっと分かり合えていると思っていた。同じ世界を見ていると思っていた。黒人と白人による体感する世界のズレや温度差。それにより見え方が揺らぎ、友情まで揺さぶっていく。黒人として不当な差別受ける青年と、白人としてよそ者として差別を受ける青年。同じ場所で同じ時を過ごしても分かり合えない人種という壁。白人黒人問題だけでなく銃社会、貧困、犯した罪、そこからの厚生といった現代問題を散りばめて、前半と打って変わった後半の張り詰めた空気にヒリヒリが止まらない。祈るように見届けたクライマックスに撃ち抜かれる。劇中に有名な『ルビンの壺』という顔にも壺にも見える絵が登場するが、壺と顔を同時に認識することは出来ない。だけど、2つの見方があることは認識できる。違いがあること、違いゆえに全てを理解するのは難しいこと、でも、それでも違う視点を尊重したまま同じ景色が見れたらいいね。
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8.『サマー・オブ・84』
「やらない後悔よりやって後悔した方がいい」とは言うけれど、それはやってしまった取り戻せない後悔を知らないから言えるのかもしれないな。これは青春イヤミスの傑作。84年の夏。きっと忘れられない夏になってしまうな…。オカルトや都市伝説が好きな主人公、少しマセてる不良、博識な子に、優しいぽっちゃりという絶妙な4人組。そして年上のお姉様。携帯もない時代の彼等は、トランシーバーで連絡をとり、自転車で疾走し、夜中に鬼ごっこをして、エロ本を秘密基地で読む。物語は、そんな青春の日々を描きながら、主人公デイビーが連続殺人犯は近隣に住む警察官マッキーではないかと疑うところから始まる。最初は正義感というよりも好奇心から真相を探りに行ったように見える。すると、どんどんどんどんマッキーに関して怪しい情報が出てくる。それと並行しながら、なんとなく友人や年上お姉様の家庭環境が不穏な描写などが描かれて…。真相に近づくにつれ、序盤のワクワク感はどんどん緊張感へと変わる。青春の通過儀礼にしては、これは余りに暗黒で残酷だ。君と夏の終わり将来の夢大きな希望忘れない…
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7.『惡の華』
押見修造原作、思春期の暗黒を描いた人気漫画の実写化。そしてヒロインはここ数年ずっとマイエンジェルな玉城ティナさん。現時点でベストオブ玉城ティナ作品ではないだろうか。(ビジュアル面ではベストかどうかは諸説ある) 玉城ティナさんが「クソムシ」と罵ってくれたり、ドクターペッパーをかけてくれたり、ブルマで体育座りをしてくれたりと、大変有難いシーンがてんこ盛りの本作は、冒頭「この映画を、今、思春期に苛まれているすべての少年少女、かつて思春期に苛まれたすべてのかつての少年少女に捧げる」といった旨の言葉から始まる。原作と違い、現在から過去を回想する形や性描写を控えめにした結果思った以上にあっさりした印象はある。が、前編後編の二部作にしたりR15にしてしまうと中学生が見られなくなってしまうから、これは絶対に1本の作品としてPG12でよかった。できれば、今まさに思春期を過ごす少年少女に見てほしいし、そして少しでも掬われて救われたらいいなと思うから。だから僕たちおじさんはもう思春期の痛みとか見て、くぅぅぅとか悶えている場合ではないのである。つらいな。ぴえん。思春期が終わっても人生は続く。これは、その先の、人生は続いていく、続いてしまう全てのクソムシ達への真っ直ぐなエールなのだ。普通ってなんだ。変態ってなんだ。そんな欠片をかき集めて、刮目せよ。はあ〜、玉城ティナに無茶苦茶にされたあとに飯豊まりえの大きな愛に包まれる青春時代最高だな〜(そういう話ではありません)
飯豊まりえさんが玉城ティナさんのことティナって呼び捨てにしてるの本当に最高だよな…
6.『ファースト・マン』
CMでは「ラ・ラ・ランドのタッグの新作!」的なノリで宣伝してたが、ただのチャゼル監督全開映画。素晴らしい音楽と映像、掴みバッチリの冒頭。フルスロットルで君たちはチャゼるのか?チャゼらないのか?と観客に問いかけると、負けじと主演のライアン・ゴズリングがあのクールな無表情、感情の起伏を一切見せない、そう、ゴズり顔を見せつけてくるのだ。このゴズリング演じる、月面着陸を目指す主人公、アームストロング船長という男は、とにかく無口で喜怒哀楽が表情に出ない。だから観客は感情移入しづらいかもしれないが、宇宙飛行士が感情を爆発させるタイプ、喜怒哀楽がはっきりしててもどうなんだ?
という気持ちになるのであれでいいのだ。どんなことがあってもクールに冷静に対応出来るからこそ船長が務まるのだ。知らんけど。あと、感情の起伏があるゴズリングなんて見たくないというのもある。本作は、ストーリー的にも映像的にも主人公の視点を意識して描かれていて、顔や機内の機械のアップが多い印象だが、それによりシャトル内部の物理的、そして宇宙飛行への心理的圧迫感が伝わる。また、想像以上の画面のブレ、そして距離感や方向がわかる音響。宇宙空間で無音になる緩急。BGMにノイズが混じるというか結構不穏で不安を煽る。「人間にとっては小さな一歩でも、人類にとっては大きな飛躍」かもしれない。しかし、アームストロング個人にとっては、それまでの幾多もの失敗や悲しいことを経て、重い重い踏みしめるような一歩であったのかもしれない。その心情に対比するような美しい月。ゴズリングが選ばれた理由と言わんばかりの万感なゴズリング顔に僕は拍手を惜しまない。
こんな感じのゴズり顔
Netflix未加入独身である私はわざわざ映画館で見たけど大正解。マリッジ・ストーリー、結婚は大変、だけど離婚はもっと大変。とにかくこの作品は冒頭くらいしかハッピーな瞬間ってないんだけど、その冒頭が素晴らしすぎる。一気に物語に引き込まれて、そこからはひたすら辛い&辛い。特にスターウォーズvsアベンジャーズ…気づいたらどっちもディズニーなアダム・ドライバーとスカーレット・ヨハンソンの罵り合いは見ているこちらが目を背けたくなるほどヒリヒリするし、2人ともキャラモノじゃないとめちゃめちゃ感情が解放されていて圧巻である。マリッジ・ストーリーと言いながら全然結婚ではなく離婚するまでの話なのだが、これは離婚を巡る愛情の物語。相手を怒るのも、裁判で自らが抱えている弁護士が相手を責め立てるときにあんな顔してしまうのも、全て根底には愛があるから。それは重ねた日々があるから。どんなに憎しんでも一度は好きになったひとで、憎しみあいながらも愛することはできるのかもしれない。これまでの日々とこれからの日々。「好き」とか「嫌い」とか抱く感情がひとつだけなんてないし、子供もいるので完全になかったことにして生きていくのも多分難しい。だからこそラストシーンに希望を抱かずにはいられないのだ。みんな幸せになってほしいな
4.『スパイダーマン:スパイダーバース』
オーケイ?じゃあもう一回だけ説明するね!スパイダーバースめちゃめちゃ面白かった!だけどたぶん今家で見てもそんなに面白いと思えないかもしれない!これは映画館で最初に見た最大瞬間風速でこの順位、とにかく映画館での興奮は忘れられない。なんかテンションで大判タオルとか買っちゃったもん。超面白かった!!!やっぱりスパイダーマン好きだな、そう思える作品だ。まるで漫画がアニメになったような映像。カット割りや、擬音語が文字になったりコミック調で描いたり、かと思えばアート的なガッツリCGになったり。もう変幻自在自由自在。文字通り漫画がアニメになったのだ。そういえばこのあとに見た『プロメア』もそうだけどショッキングピンクと黄緑のパキッとした組み合わせって最近の流行なのだろうか。ともかく、そんなド派手な映像で描かれるのはスパイダーマンシリーズ普遍の「大いなる力には大いなる責任が伴う」ということ、子供から大人への成長物語。それに加えてそして今作は「スパイダーマンはひとりじゃない」という熱いメッセージ。“親愛なる隣人”であるスパイダーマンはヒーローだけど、人並みの悩みを抱えたひとりの人間に過ぎない。だけどそれは、平凡な僕らも生き方ひとつで誰かのヒーローになれるということ。白人も黒人もおじさんも子供もみんなマスクを被れるし、みんなヒーローになれる。オーケー?次紹介するのは君の番なんだよ!家で見たら微妙かもなんて言ってたけど感想書いてたらやっぱり家でも見たくなってきた。僕は字幕で見たから、CV.悠木碧のグウェン見れてないのよね…
#1 走馬灯
『僕だけがいない街』僕の好きな悠木碧
3.『さよならくちびる』
これが今年の偏愛枠!かと思いきや、結構ベスト10にあげてるひとも多くて嬉しい。ほんと刺さるひとにはぶっ刺さる作品であることは間違いない。ちなみに僕は小松菜奈と門脇麦の時点で既に刺さることは約束されていたのであーる。そんな2人と共演するのは2019年1番クズが似合っていた男こと成田凌。門脇麦と成田凌…もう絶対成田凌クソ野郎じゃんドロドロするじゃんと思いきや、これはいい奴な成田凌でした。本作は門脇麦と小松菜奈のフォークデュオ「ハルレオ」とそのマネージャー?シマの3人での解散ライブまでの道程を過去回想を交えて進むのだが、本当に唐突に回想が始まるし分かりやすい台詞で気持ちを語らないので不親切なのかもしれない。だけど画面から全部伝わってくる。映画から溢れる大いなる余韻と余白。そして猫みたいな小松菜奈。劇中でロングにもショートにもなる小松菜奈。好き、大好き。どっちかというとロング派だけどなんでも好き。そしてそういった生きてるだけで画面に彩りを添えるどころか外の世界まで変えてしまうような美しい小松菜奈のような存在と組んだ時の、地に足ついた現実と地続きのまるで群青色を纏った門脇麦がこれまた最高で僕は大好きなんですよね。そんな2人、シマ含めて3人はまあ解散するくらいだから結構ギスギスしてる。それは3人それぞれの片思いが関係を歪めている所為なのかもしれない。だけどどんなに関係が歪んでも演奏したら息ぴったりで。大好きだから終わりにしようと思った。変わることと変わらないもの。カレー、煙草、そして音楽。不器用で彼女たちの旅の行く末に幸せがあってほしい。大好きだ!と言いたくなる映画であった。そういえば、完全に偏愛枠だと思っていたのは、確かに多少むーんと思うひといるだろうなってシーンや展開とか、「今時SNSもやらないフォークデュオってどうなん?」という反対派の意見を目にして。そして正直それに関してはなかなか強く否定出来ないというのがあったからですが、僕個人の意見というか妄想としては、たぶん門脇麦が「いい音楽というのはバズるとかしなくてもちゃんと届く。私は目の前のひとに歌を届けたい」とか言いだして敢えてSNS使ってなさそうだし、小松菜奈が門脇麦とお揃いがいいからフォークデュオになったんだと思っています
2.『正しいバスの見分けかた』
「2015年に制作された短編映画」という本作を映画ランキングに載せていいのか。いいんです!
映画の定義警察が来ようとも、僕はこれをランクインさせたいのだ。第一、映画の定義警察はきっと今はNetflix作品とは映画なのかで頭を悩ませているだろうからな。これめちゃめちゃ面白かったです。そしてなによりマイベスト中条あやみだし、きっとこれを見た多くのひとのベストあやみになると思う。そのくらい「正しいあやみの使いかた」を理解してた高橋名月監督に拍手。話としては田舎の高校生4人の会話劇で、劇的なことは起こらない。だけど青春なんて外から見てれば大したことなくても、輝いていたり大きな一歩だったりするわけよね。あ、4人で会話するっぽく書いちゃったけど、ほぼ同性同士の友達2人ずつのペアで会話してます。それで自分の友達が自分の好きな子の知らないことを知っているシーンとかあって、もうたまらないですよね。モラトリアムで気怠くも眩しい青春の瞬間を切り取った作品だけどそんなに瑞々しい甘酸っぱい~~とならない(なるけど適度に)のは、会話の間合いとかがリアルすぎるのと内容が面白いからです。こういう生感ある会話劇に出演している岡山天音くんと萩原みのりさんはもうそりゃ良いんだけど、そういった劇に相性悪そうに見える中条あやみが、本当に自然に映画の中のそこにいるのよね。関西弁が自然にさせているのか、中条あやみの頭身の素晴らしさが気にならないくらい開放的なロケーションの勝利なのか、はたまたどうしても存在が非現実すぎて浮いてしまう中条あやみだからこそ少し独特な不思議な高校生役がハマったのかは分からない。ただ繰り返すけどあやみ観が変わるほどの最高のあやみなので見て欲しいですねえ。
正直Blu-ray化は難しそうではあるのよな……。高橋監督、なんとかがんばってください!!!
1.『女王陛下のお気に入り』
今年の優勝は迷わず決まった。凄まじい作品だ。『ロブスター』のランティモス監督×レイチェル・ワイズコンビなんてことを今の今まで忘れるくらいに作品のパワーと不穏な空気と悪趣味がつよい。もっともランティモス作品の中では『女王陛下のお気に入り』は最弱......ではなく分かりやすい歴史モノ、大奥モノ。うん、なんと表現してもなんか違いますね。イングランドのアン女王の寵愛を巡り、長らく務めている側近のサラと、元貴族の使用人で成り上げっていくアビゲイルの熱く静かな戦い描く。関係ないけど寵愛と超愛って似てる。おそらくわざと時代感を無視した衣装や自然光だけの明かりがかえって新鮮に映り、魚眼レンズで映された舞台は宮廷内の歪みを表すかの如く。アン女王のオリヴィア・コールマンが演じる虚無、レイチェル・ワイズの気品、エマ・ストーンの目つき。オリヴィア・コールマンが本作でアカデミー主演女優賞を受賞したことで、結果的に全員オスカー受賞経験者という画面と世界観に負けない女優の映画でもあった。そしてびっくりするくらい宮廷の男爵達はダメダメに描かれて笑ってしまう。そんなシュールなユーモアの先にあるのは愛の物語。忠誠、複縦、対等。その言動に、愛はあるんか。劇中に登場する、飼いならされるウサギと飛んだ刹那撃たれる鳩。そういえば、良くも悪くも異物感のあるエマ・ストーンはアメリカ系で、オリヴィア・コールマンとレイチェル・ワイズはイギリス系なのは意図があるのかしら。そんな様々な思惑を考えずにはいられないし、エマ・ストーンのおっぱいが忘れられない。
2020年もなにとぞ。
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