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『サマー・オブ・84』感想 レビュー 好奇心のその先は




2017 (C) Gunpowder & Sky, LLC


『サマー・オブ・84



ホラー映画が苦手なので今作はスルー案件かと思いきや評判が良いので鑑賞。にわか組です。本作のレビューでよく引用に出される『IT / イット』も怖くて見てないし、『ストレンジャーシングス』もNetflix民ではないので見ておりません。でも言いましょう。大丈夫です。なにも心配なし。ホラーというより、これは青春イヤミスの傑作。見て良かった! だけどもう暫くは見たくない


サマーオブ8484年の夏。今作のポスターにもある「連続殺人鬼も誰かの隣人だ」というモノローグ。鳴り響くシンセの音、登場人物の衣装、空気。冒頭は少し不穏ながらも高揚感があったわけですよ。4人の思春期少年達の瑞々しさ。オカルトや都市伝説が好きな主人公、少しマセてる不良、博識な子に、優しいぽっちゃりという絶妙なバランス。そして年上のお姉様。年上のお姉様! 携帯もない時代の彼等は、トランシーバーで連絡をとり、自転車で疾走し、夜中に鬼ごっこをして、エロ本を秘密基地で読む。今ここでコンビニのエロ本陳列問題に言及するつもりはないけれど、ネット全盛の今では考えづらい娯楽の数々。だけどなんて楽しそうなんだろうな!


物語は、そんな青春の日々を描きながら、主人公デイビーが連続殺人犯が近隣に住む警察官マッキーではないかと疑うところから始まる。デイビーは最初は正義感というよりも好奇心から真相を探りに行ったように見える。個人的には『アンダー・ザ・シルバーレイク』を思い出させる無益な謎解きかと思っていたけど、4人で協力して探るところがヒヤヒヤするし、なによりどんどん怪しい情報が出てくる。それと並行しながら、なんとなく友人や年上お姉様の家庭環境が不穏な描写などが描かれて、真相に近づくにつれ、どんどん物語に暗い影を落としていく。序盤のワクワク感はどんどん緊張感へと変わる。


「やらない後悔よりやって後悔した方がいい」とは言うけれど、それはやってしまった後悔を、取り戻せない後悔を知らないから言えるのかもしれない。好奇心の果てになにが分かるのか。やった先にある現実は、あまりに暗黒だ。「連続殺人鬼も誰かの隣人だ」かつて高揚感を感じたシンセの音が、今は不気味に鳴っている。84年の夏。それはきっと忘れられない夏になってしまうな





青春イヤミスといえば、米澤穂信先生↓


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