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『芳華 -Youth-』
静かに打ちのめされている。1970年代の中国で時代に翻弄される若者の青春は、非情で切なくも、眩しく鮮やかに美しい。「文工団」という軍人を慰問する歌劇団の話だが、「youth」とタイトルにあるように、結構青春にフォーカスされているので、そこまで歴史に詳しくなくても大丈夫。もっとも、大きな歴史の中に小さな歴史がある本作なので、知っているに越したことはない。今作で描かれるのは、あの日、誰しもが感じたことがあるであろう、初恋や傷ついたこと。そしてもう戻らないことと、まだ自分の中に残っていること。
1970年代の中国が舞台であるが、大きく分けると3つの時代が描かれている。「文化大革命」末期での文工団での日々、中国とベトナムの戦争、そして終戦後の開放および急速な経済発展時代である。
尺の長さでは、青春映画というように、文工団時代が多かったように感じる。パキッとしていない淡いトーンの画面での踊りと音楽。そして、個人的にはとにかく水に濡れるシーンが多かったような。いや、多かったのか印象的でどれも覚えているだけなのか。あの出会いも、あの雨も、あのプールも、とにかく美女がびしょ濡れ(すみません)。正直なところ、登場人物の判別に苦戦していた序盤はストーリーに乗り切れなかった部分があったのだが、そこを理解してからは、画面に釘付けとなる。
文工団に合格した主人公シャオピンは、父に一刻も早く自身の姿を知らせたかった。(このとき父は拘束されており、そのことも隠している)だがそれをきっかけに騒動が起こり、ほかの団員からの信用を失ってしまい、さらにはいじめにまで発展する。そこで登場するのが、もうひとりの主人公であるリウ・フォンであった。彼は模範兵であったが、腰を痛めてしまい文工団の裏方を務めていた。シャオピンにとって唯一信頼できる存在こそ、リウ・フォンだった。だがこの2人は激動の時代に飲まれていく。
文工団での様々な事件もあったのち、特に中越戦争が、若者たちに影を落とす。ここの描写が想像以上にハード。そして戦争後の各々の立場の変わり方もシビア。幸せの定義はそれぞれとはいえ、真面目に生きていたひとが必ずしも報われることはないという不条理さ。「英雄」になりたかった者に対する結果がつらい。
青春は、文工団は、美しく幸福で家族みたいな場所だった。シャオピンのことをいじめていた団員は、なんの疑問もなく、あの日々が幸せだったと泣いている。だが、そうは言えない思えない、色々な事情でその箱舟から外れた人だっている。その一方で、今の繋がりも、どうしようもなく胸に残っているのも、その時代のことであるのだ。そのくらい、もう戻らないあの日々は濃密で鮮烈だった。
登場人物の一人が、過去を振り返るという形での構成により、余計に鑑賞者にリンクする。ゆえに、過去を振り返りがちな僕に響いてしまった感はある。そう、今なら分かるんだよ…。
あと語り部役の女優さん、超タイプっす。
以下、少しだけネタバレ。
前述の「英雄」になりたかった者は、シャオピンとリウ・フォンのことである。シャオピンは一時は仮病を使うなどしたこともあったが、戦地に出向になっても精力的に働き、英雄扱いとなる。文工団に入隊したときの志を貫いたのだが、戦争が終わると、戦時中のショックと生活の落差で心を壊してしまう。リウ・フォンは、いわば好きな子にフラれたあげく、文工団も脱退させられたわけだが、戦時中に活躍する。しかし、彼は英雄として死にたかった。凡人のままではなく、英雄として死に、好きだった子に自分のことを歌ってほしかった。模範兵の唯一の欲求であった彼女への想い。だが、それも叶わず、右手を失いながら凡人として生きることになる。彼は欲がなく、ひとに大学を譲るような人であったが、譲らずに自分が進学していれば、周りの期待通り、エリートコースを進んでいれば、どうなっていたか......。だからこそ、最後の経済発展したあとに、かつての仲間が、あの日々の価値はそんなもんじゃない(といった旨)の発言をして助けたり、シャオピンとリウ・フォンが再会していたり、少しは報われていたみたいでよかった。戦死した戦友たちに比べたら不幸なんて言えない。あの表情にきっと嘘はないから。そしてシャオピンの想いも届いてよかった。
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