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『パリ、嘘つきな恋』レビュー 感想

(C)2018 Gaumont / La Boetie Films / TF1 Films Production / Pour Toi Public 『パリ、嘘つきな恋』 大人の余裕が漂う、お洒落でユーモア溢れて、差別や偏見の問題を内包しながらも明るく爽やかな 107 分。そして、その 107 分かけて、「嘘をつきました。ごめんなさい」と謝るまでの話である。 イケメン軽薄プレイボーイであるジョスランは、ひょんなことから「車椅子生活である」と嘘をつき、それがキッカケで、本当に車椅子生活を送るフロランスと出会う。会うたびにフロランスに惹かれていくジョスランだが、いうまで経っても、なかなか本当のことを言えないのだ。 僕みたいな嘘をついたことない正真正銘の無実潔白誠実純情派の人からすると想像するしかないのだが、あくまで、想像なのだが、嘘はついてから時間が経てば経つほど、弁解しにくくなるよね。即興ならジョークになっても、禍根に残せば嘘になる。まあそんなの分かっちゃいるんですけどね。特に、当初自分本位でついた嘘なのに、関係性が進んでいくと、嘘をついたことで裏切っているという、相手のことを考えて苦しくなってくる。 恋愛において、いや恋愛に限らず、少し嘘が必ずしも悪いものではない。 ( 程度の問題はある ) 嘘は恋のスパイスだ、くらいに言う人だっているかもしれない。ただ、この作品内嘘をつき通そうとするシーンは、大抵滑稽で笑える。だけど、偶然近くに来たから、みたいな嘘は綺麗。 なにより、あのプールのシーンが全てなのだと思った。ピュアな男の演出が超大人なのはさておき、水の中では皆と同じように振る舞っている。まるで立っているかのように。あの瞬間は魔法だった。ストーリーなどは大人というか古風な感じなのだが、僕はベタな魔法にかかりにこの作品を選んでいる部分があるので、これこれ。という具合である。ハンディキャップと偏見に対するユーモアのバランスは絶妙。そしてそれを象徴するようなラストシーン。気が向いたら原題の意味も調べて欲しい。 あと、『ドント・ウォーリー』のときもあったが、気になるけど聞けない、下半身不随の方の大人の事情の話など、学びも多い。僕らはフィクションの世界を通して、自分が知り得ない世

『ガルヴェストン』感想 批評 レビュー

COPYLIGHT 2018 EMERALD SHORES LLC - ALL RIGHTS RESERVED 『ガルヴェストン』 原作では時系列シャッフルしてるらしいのだが ( それで脚本も務めてた原作者が降りたって本当? ) 今作は時系列通りに進む良いロードムービーになっている。良いって言っても明るくハッピーって感じではないし、特別大きなサプライズがあるわけでもないけど。退廃的で虚無的な。 危険な男と若い美女の逃避行というよくある話ではあるのだが、 2 人の空気とか、画面の湿度とか、眩しさとか、長回しの緊迫感で、出来映え以上に好きになりそう。 ( 僕はとりあえずエル・ファニングの時点で加点がすごい ) 基本的には、ベン・フォスター演じるロイの復讐と贖罪の話だ。 PG12 でエル様がロッキーという娼婦役と聞いて大人のシーンを期待した諸君 ( および僕 ) には残念だったが、おそらく指定なのは暴力描写だろう。 とはいえ、大人のシーンではないけれど、エル様の海のシーンは忘れられない。白い肌に金色の髪、そこに鮮やかなブルーの水着。エロいとかなんて通り越して、もはや神々しい。眩しいのは後光である。天使かな?まあ天使でしょう。いやどう考えても天使である。そしてこれは、出会ったときの真っ赤なドレスと対になるようなカラーなのである。 海のシーンでは疑似家族感含めて万引き家族を思い出す。 ( 松岡茉優の水着も青系だったような ) その他にも劇中、こちらが心配になるくらいざっくり胸が空いてるシーンもあるが、ちゃんと本編に集中させる画面とエル・ファニングの力。ロイは絶対にロッキーに手を出さないマンなのだが、ちゃんとそのシーンまでに感情移入できているので、同じように僕も手を出さないマンの視点で見ることが出来る。 死に場所を探す者と、生きるために縋る者。肺に影が見つかり組織にも裏切られたロイは、ロッキーと過ごすうちに彼女が希望となる。ロッキーもまた脱出したいというところから再起を図ると思えるようになったのも、ロイという希望があったからなのだ。ハッピーな話ではないので、いくら美しい瞬間があっても悲しいシーンもある。というか終盤は結構辛いし、皮肉な結末である。だがそれでも、あの美しい瞬

『芳華 -Youth-』感想 レビュー

(C)2017 Zhejiang Dongyang Mayla Media Co., Ltd Huayi Brothers Pictures Limited IQiyi Motion Pictures(Beijing) Co., Ltd Beijing Sparkle Roll Media Corporation Beijing Jingxi Culture&Tourism Co., Ltd 『芳華  -Youth- 』 静かに打ちのめされている。 1970 年代の中国で時代に翻弄される若者の青春は、非情で切なくも、眩しく鮮やかに美しい。「文工団」という軍人を慰問する歌劇団の話だが、「 youth 」とタイトルにあるように、結構青春にフォーカスされているので、そこまで歴史に詳しくなくても大丈夫。もっとも、大きな歴史の中に小さな歴史がある本作なので、知っているに越したことはない。今作で描かれるのは、あの日、誰しもが感じたことがあるであろう、初恋や傷ついたこと。そしてもう戻らないことと、まだ自分の中に残っていること。 1970 年代の中国が舞台であるが、大きく分けると 3 つの時代が描かれている。「文化大革命」末期での文工団での日々、中国とベトナムの戦争、そして終戦後の開放および急速な経済発展時代である。 尺の長さでは、青春映画というように、文工団時代が多かったように感じる。パキッとしていない淡いトーンの画面での踊りと音楽。そして、個人的にはとにかく水に濡れるシーンが多かったような。いや、多かったのか印象的でどれも覚えているだけなのか。あの出会いも、あの雨も、あのプールも、とにかく美女がびしょ濡れ ( すみません ) 。正直なところ、登場人物の判別に苦戦していた序盤はストーリーに乗り切れなかった部分があったのだが、そこを理解してからは、画面に釘付けとなる。 文工団に合格した主人公シャオピンは、父に一刻も早く自身の姿を知らせたかった。(このとき父は拘束されており、そのことも隠している)だがそれをきっかけに騒動が起こり、ほかの団員からの信用を失ってしまい、さらにはいじめにまで発展する。そこで登場するのが、もうひとりの主人公であるリウ・フォンであった。彼は模範兵であったが、腰を痛めて

『愛がなんだ』感想 レビュー どうしようもなくまっすぐだから、こんがらがってしまうのだ

(C)2019「愛がなんだ」製作委員会 『愛がなんだ』 台詞の生感、間合い、流れる空気がリアリティあって、たまらなく好きで、どうしようもなく突き刺さり抉られる。いやあ、たまらないですね。こうも感情を揺さぶるかと。特報では岸井ゆきのと成田凌演じるテルコとマモルの恋愛模様で、『勝手にふるえてろ』的な感じになるかと思いきや。 エンディングの Homecomings の曲が良すぎて、見終わったあとは、なんだか爽やかな気持ちになっているけど、鑑賞中は、「お願い! もうやめて!」と何度ひりひりしたことか。病人に味噌煮込みうどん作っちゃうとか色んな意味で " 重すぎる " テルコだけどなんですかあの足のじたばたにふくれっ面になんだこの可愛い生き物最高の岸井ゆきのも、マモル役の今一番ダメな男が似合う成田凌も、ド S 葉子さん深川さんも、実年齢は 1 番上なのに役ではほんとに下っ端溢れる若葉竜也演じるナカハラくんもみんなよかった。みんな幸せになってほしいっすね、、、。 登場人物みんなの言いたいことが分かるし分かんない。共感できるし共感できない。嫌なところたくさんあるのに嫌いになれない。外から見てもそうですから、当人達は嫌いになんてなれるわけないんですよ。なんで、どこが、好きになったのか分かんないけど好きなんですよ。正論なんてわかってんだようるせえばーか。どうしようもなく、まっすぐだから、こんなにらこんがらがってしまっているのだ。け 友達のことならわかるのに、自分のことには無自覚。葉子とかその典型である。マモルのテルコを都合よく扱う態度にはすげえキレてるけど、同じようなことをナカハラにしてしまっているという。そして鑑賞者の僕も、他人の目線で見ているときは、「そんなやつやめときな」と思えるのに、段々感情移入してくると、共感してきて辛くなる。どの目線で見てもえぐられて厳しい。愛されていることに無自覚な人と、どんどん愛を注いでのめりこんでしまう人。 よく恋愛ものだと相関図とかあるけど、今作は基本的にどの矢印も一方通行で。だけど、同じ目線になったシーンもちゃんとある。だが、どれも切ない理由だからで。同じ振り向いてもらえないのに尽くしてしまう恋をしているテルコとナカハラとかね。あの空気ほん