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『ダンボ』
汽車が大陸を横断する。幸せと郷愁を帯ながら。トンネルを抜けると、そこはサーカスだった。タイトルバックまでの流れは完璧で、それはたしかに傑作の予感がした。サーカスの準備中に登場したのは、戦地から帰ってきた、片腕を失った父だった。その無くなった左腕の空間に、娘が駆け寄る。そう、これは異形に、悲しみに寄り添う物語だ。
アニメ版未視聴。
いわゆるザ・ティム・バートン的なダークな世界観は薄めであり、本作はダンボの愛らしさを愛でる映画とも言える。リアリティを感じさせながら、明らかにファンタジーと夢が伝わる、ダンボの表情や仕草。ストーリー序盤で母と離れ離れになるダンボと、同じように、母を亡くした境遇である姉弟が心を通わせる部分は微笑ましい。台詞がなくとも雄弁に語るダンボに心を鷲掴みにされる。
ダンボは全編において可愛らしい。だが、ひとつだけ。そんなダンボがシャボン玉のショーを見つめる瞳、ピンクに映る瞳。あのシーンは忘れられないくらいに悲しくなる。何かを悟った、というより諦めてしまったかのような瞳。そんなダンボに自分を重ねたのだろうか。全編通して美しいエヴァ・グリーン演じるコレットは、ダンボと共に空を翔ける。
ストーリー的に何か驚きの展開があるわけではない。強いて挙げるなら、ディズニー映画でありながら、ディズニーランドを意識したであろうテーマパークが、あそこまでド派手に燃えたことだろうか。予定調和と言われればそうかもしれない。だけど、世間から化け物と言われようとも、大切な何かを失おうとも、そういう人々がみんな劇的な日々を送らなきゃいけないことなんてない。彼らは、ただ腕がないだけだし、ただ耳が大きいだけなのだ。
大切な仲間を失った代わりに、たくさんの煌めいた思い出を得た。きっと悲しみがないと言えば嘘になるだろうけど、そんな世界でも、日々は続くしサーカスも続いていく。いや、続けていくのだ。ダンボと飛んだ記憶と共に。
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