『ROMA / ローマ』
作品賞を獲れなかったのは、やっぱりNetflix限定だったからかなあと思わずにはいられないほど、素晴らしい作品だ。この映像と音響は、絶対映画館で見たほうがいい(映画館ではないと集中が持続しないという部分もありますしね)
まずオープニング。この時点でなにかとんでもない予感をさせる美しさ。白黒画面かつ70年代が舞台ということで、レトロ風なのかなと思いきや、なんかパキッとしてる画面で、クリアでエッジが効いてて、アートというか洗練されている。
そして物語は俯瞰する視点で進んでいく。日々の出来事自分が物語の登場人物になるというより、なんか『ア・ゴースト・ストーリー』のKの気持ちというか。流れる時の観測者みたいな。ただ、淡々としている中でも印象的なシーンは多く、犬の剥製や、あの映画が『ゼロ・グラビティ』に繋がったのかな、とか、謎の師匠の謎のポーズとか、クソ男フェルミンとか、謎の甲殻類のオブジェとか、示唆的なものもあれば、画面の力を増幅させることも含めて注目してしまう。
そして音のリアリティがとんでもない。劇伴なしで、人々や動物の声が重なり合って聞こえる。波の音、銃声。聞こえる方向距離感がジャストで、まるでそこに立っているかのような没入感。
多くを説明はしないのだけど、ずっと何かが起こりそうで起こらない状態が続く空気。随所に不穏なカットはあるんですよ。コップが割れたり赤ちゃん見てたら地震があったり。そしてやっぱり事件は起こる。もう絶対なんかあるじゃんとなって、やっぱりある。あのシーンはどうやって撮影しているのか。なかなかその場所を映さない間、僕は祈るような気持ちでクレオを応援する。
事件の先に見えるもの、失うもの、そして気付くもの、手に入れるもの。海でのシーンを見て『万引き家族』のことを少しだけ思い出した。血縁じゃなくても家族になれるのだ。日々は悲しくとも美しいのだ。オープニングと対になるラストシーンに至るまでの時間に、考えを巡らさずにはいられないし、今この時代を生きる僕たちは、巡らせ続けなくてはいけない。
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