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『グリーンブック』
結論から言えば、結構面白かった。ケンタッキーが食べたくなる。だけど、アカデミー作品賞を獲ったことが逆に作用してしまいそうな印象だ。
本作は黒人と白人のバディものであるが、知的なピアニストの黒人ドクター・シャーリーとガサツだが腕っ節が良くて口が立つ白人のトニーの組み合わせで、今までの多くの作品では逆になっていたかと思う。その構図により、黒人ドクター・シャーリーが、黒人生まれながら自らに黒人の文化が根付いていないコンプレックスを抱えている。反対に今までの生活としては、イタリア系白人のトニーの方が黒人に近い部分もあったのだ。という妙。そして、それを演じる2人は素晴らしい。助演男優賞を受賞したマハーシャ・アリは、黒人はとりあえずデンゼル・ワシントンかジェイミー・フォックスだった枠を全部取って代わりそうである。
推測だが、実話ベースといいつつ大いに脚色しているのだろう。大胆な登場人物のキャラ設定。ほんとにやったの?というエピソード。(美人と言われていたトニーの妻は本当に美人でした)人種問題を取り扱うシリアス作品というより、コメディ映画のテイスト。監督的にもそうだし。ただこの明るいノリが説教くさく無いというか、純粋にハートウォーミングな映画に仕上げているとも言える。
びっくりするくらい丁寧に王道でコテコテの伏線にストーリー展開。劇場内でも随所に笑いが漏れ、かなり万人にオススメしやすい物語ではある。しかしその反面、正直真新しさや、大賞だぜどーん!という破壊力が足りなく感じてしまったのは事実。それに、その今までの定番で表層的に見える表現こそ、白人が思う黒人のステレオタイプの描き方などと批判される部分もあるのだろう。ある意味綺麗すぎる物語が綺麗事として批判されている。
しかし、気軽に見れるコメディとしてアカデミー賞受賞までした結果、興味を持った人々が、この問題に向き合うキッカケになれば、本作の意義は果たされるのかと思う。そして、どれと同時に、2019年に白人(アカデミー会員の多く)が良いと思ったことに、まだアフリカ系黒人は納得していない人も多いことを僕は忘れてはいけないなと思った。(いろいろググってね)
と、まあ、つらつらと書いたが、ハードルを上げずに、口コミで話題のちょっと社会派ハートウォーミング映画くらいの気持ちで鑑賞したかったぜ…という気持ちだ。アカデミー作品賞というより、『メリーに首ったけ』や『ふたりにクギづけ!』(名作)の監督がちょっと真面目に作りました、くらいのテンションで楽しみたいところ。作品としては良質な佳作。
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