(C)2019「21世紀の女の子」製作委員会
『21世紀の女の子』
企画・プロデュースを『溺れるナイフ』などの山戸結希監督が務めるオムニバス短編集。
“自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーがゆらいだ瞬間が映っていること”を共通のテーマとして、各々の地点から、8分以内の短編で表現し、1本のオムニバス作品となります。(公式ホームページより抜粋)
山戸監督含む合計15名の監督が各々の視点で描く作品群。ここでは、各作品についてひとことずつ記していきたいが、こんなに多くの作品、および価値観を提示されると、もう良い悪いとかではなく、合う合わないの話である。自分はこれが良かった、これに共感した、この視点はどういうこと?
と議論できるのも、本企画の魅力である。
※本当は国内版の順番に書きたかったんですが、忘れたので、インターナショナル版の順番です。
『回転てん子とどりーむ母ちゃん』:山中瑶子
最初は何を見ているのか...と思っていたが、会話のテンポも良くどんどん引き込まれていく。既成概念をブレイクスルーする最後を見て、そこまでの流れに納得。
『粘膜』:加藤綾佳
うおおおお!俺たちの日南響子おおおお! 女性が性に奔放だったり積極的であることが憚られてしまいがちな世の中に対して、そう思うことはなにも不思議なことではないと、肯定していく物語。
『projection』:金子由里奈
目線で語る伊藤沙莉。仕草で語る伊藤沙莉。天才的な俯き方をします。台詞が少ない役柄ゆえに、話したときの空気が変わる感が絶妙。
『恋愛乾燥剤』:枝優花
もう山田杏奈ちゃんを本当に可愛く撮るなあというのと、結構コミカルなテイストなので、ヘビーになりがちな本企画の中で貴重な存在。多様性と言われると、僕は先入観で同性愛的なことを考えてしまったけど、ザ・乙女的な恋愛をしたい気持ちだって認めて尊重すべきだものと。これが恋?
なんか、思ってたのと違う! こういうのじゃないんだよってほんとあるよね、わかるわかるよーという。眩しい感情、明るいピンク。「世にも奇妙な物語」でも行けそうなお話。
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『out of fashion』:東佳苗
どうしても、東佳苗さんもこうだったのかなあ、と思ってしまいます。(作者と創作物は別なのは理解しています)率直なところ、あまりセクシャル、ジェンダー性を感じられなかったのですが、話として好きなタイプ。青春の終わりと表現者の覚悟。
『君のシーツ』:井樫彩
幸せな現実に対して、日常がありながら、夢を見ること、空想に繋がりを求めてしまうことだって、そりゃあるよね。後述の作品に、実質フィクションのような関係から日常に繋がりを求めたくなってしまう作品があり、そことセットで考えると面白いです。
『Mirror』:竹内里沙
『ミューズ』(後述)と本作と連続してカメラマンの話でしたが、瀧内公美さんのカメラマンは、なんつーかめちゃめちゃ格好いいな。この格好良さに、対になる朝倉あきの佇まいの衝突が、すごい緊迫感を生んでいます。全編でナイフ、いやカッターを突きつけられているようなヒリヒリ感。表現者としての苦悩、業にまで触れるような作品。
『セフレとセックスレス』:ふくだももこ
まず、タイトルが優勝。愛がないセックスがあるなら、セックスがない愛だってある。2人の男女の雰囲気がとても自然。それでいて綺麗に8分でまとまるし、ハッピーだしで良かった。黒川芽以は超綺麗。
『ミューズ』:安川有果
国内版ではトップバッターで、非常に分かりやすい作品。だが、8分間の持ち時間の中で、ここまでしっかり分かりやすくドラマ性を持たせて作ることは凄いことだと、すべて見た今ならわかります。出会って、この気持ちが恋だと気づくまでの時間を描いているが、きっと恋になったのはこの瞬間だったんだろうな。本当に自然に、“自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーがゆらいだ瞬間”が映っていたかと。あと、石橋静河さんはなんか健康的なエロスがありますよねえ。
『I wanna be your cat』:首藤凜
今作も、生み出すものの苦悩や、非現実と現実の話。なんだけど、もう脚本家役の振り切ったちょっと面倒な女性のパワーが強くて強くて。
『珊瑚樹』:夏都愛未
トライアングルですね...。たまたま好きになったのが、男の子を演じる女の子だった。たまたま好きになった子には、恋人がいた。それだけなのだ。
『reborn』:坂本ユカリ
空虚というか、何者にもなれないというか。明らかに不満というわけでもないけど、満足もしていない。停滞した空気の作り方が見事。
『愛はどこにも消えない』:松本花奈
好きだったことを否定しない。もうこの作品はこれに尽きるんですよ。結果を知ったら嫌いにならなきゃいけない必要なんて、ないんだよ、と。きっと今まで抱いた沢山の好きが、今の好きへと導いていくし、次の好きへと繋がっていくのだ。愛はどこにも消えない!
友達以上恋人未満パーカーかわいい。橋本愛も当然かわいい。そういえば、愛と橋本愛がかかってるんですかね(違います)
『離ればなれの花々へ』:山戸結希
やはり予想通り最後に登場するんですけど、もう圧倒的でしたよ…。畳み掛ける台詞、美しい画、強烈なメッセージ。個人的に、山戸監督は、映画はそれこそフィルム的な瞬間瞬間の連続だということをとても意識して撮っている気がしている。画の閃きに想いを乗せて殴りにくるので、映像として流れると切迫感や感情量が段違いで伝わってくるのだ。(MVっぽい気もするけど)今まで13人の監督が描いた他人それぞれの人生を、最後に大いなる愛で肯定する。
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ジェンダー、性のゆらぎ。そのゆらぎは、何かを誰かを好きになったり、好きになれなかったときに、きっと実感するのだ。
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