(C)2019「チワワちゃん」製作委員会
『チワワちゃん』
今作を中身のないお洒落映像と言う人もいるだろう。だが、他人のモラトリアムを傍からみればそんなものだ。僕らの時代だ! と言わんばかりの若さ故の全能感には限りがあって、唐突に失われたそれは、ポッカリと心に穴を開ける。本当はどこかで気づいていたけれど、気づかないフリをしていたのかもしれない。
チワワちゃん役の吉田志織は、あの役柄に説得力を持たせるには充分すぎる眩しさだけど、僕は玉城ティナちゃん派。皆に好かれる極彩色な虚無の象徴みたいなチワワちゃんに、好きな人や居場所をどんどん奪われるけど、いざ失ったら喪失感を感じる門脇麦が良い。ヒロインになり損ねた女の子。だが、まあ既視感はある。若手出演者陣が生のエネルギーを溢れさせるなら、門脇麦(村上虹郎くんも)の存在が表面的な話になりそうなところに、グッとリアリティというか現実感を与えている。
あの頃の僕らは何が楽しいかわからないけど、何もかもが楽しかった。苦しいことも悲しいことだってあった。でも失ったらやっぱり寂しくなる。死んだら文句も言えない。だからこそ、チワワちゃんと、過ごしたあの日々にちゃんと別れの挨拶をして、明日に向かうのだ。
「Have a Nice Day!」
僕は彼らのようなパリピではなかったので、全能感なんてなかったけれど、全能感というよりは、まあなんとかなるだろ感は持っていたとは思うし、いまも引きづっている節はある。この手のモラトリアム映画大好きだけど、そうはいっても映画の登場人物達は20歳前後で、いまさらアラサーの僕がなにを共感してるんだ、という話は分かっている。僕が『チワワちゃん』を見てエモーショナルな気持ちになっているときに、地元の友人は子供が生まれて父になった。
『チワワちゃん』はかつての時代を振り返る話で、僕にはチワワちゃんみたいな友達はいなかったけど、チワワちゃんを通じて、登場人物のみんなと同じように、過去を、かつて同じ時を過ごしたひとのことを思い出してしまう。そういえば、今作の公開は「成人の日」の4日後だったけど、僕は成人式で、きっと(数名を除いて)この人たちと会うのは今日が最後なんだろうなあ、と強く思った記憶はあって。ある種のひとつの終わりの象徴的出来事である成人式のすぐ後に公開したのは、そういった清算的な意図もあったのかな、と思ったり。思わなかったり。
最後に。
30秒の特報が一番好きだったかもしれない。
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