(C)2018「ルームロンダリング」製作委員会
『ルームロンダリング』
監督:片桐健滋
出演:池田エライザ、オダギリジョー、渋川清彦 など
5歳で父親と死別した八雲御子。翌年には母親も失踪してしまい、祖母に引き取られた御子だが、18歳になると祖母も亡くなり、天涯孤独となってしまった。しかし、祖母の葬式に母親の弟である雷土悟郎が現れ、住む場所とアルバイトを用意してくれた。その仕事とは、ワケあり物件に住み込んで事故の履歴を帳消しにし、次の住人を迎えるまでにクリーンな空き部屋へと浄化すること=“ルームロンダリング”。引っ込み思案で人づき合いが苦手な御子にとって都合の良い仕事だったはずが、行く先々で待ち受けていたのは、幽霊となって部屋に居座る、この世に未練たらたらな元住人たち。ミュージシャンになる夢を諦めきれないパンクロッカーや見ず知らずの男に命を奪われ恨み節が止まらないOL、カニの扮装をした小学生!?なぜか彼らの姿が見えてしまう御子は、そのお悩み相談に振り回されて…!?(公式ホームページより引用)
初めに言っておこう。俺の、いや。俺たちのエライザ様のグラマラスボディを拝むシーンは、ほぼない。ほぼほぼない。 ほぼほぼほぼない。序盤にちょろっと、「ほらお前ら、これ目当てなんだろ」という具合に着替えシーンが出てくる。だけである。だけ? いや着替えシーンがあるだけで感謝しないといけない。量ではない、有無なのだ。うむ。
こじらせ気味引きこもり気味で根暗な御子を池田エライザ様が演じているのだが、本当にエライザ様が根暗に見えてくる。それはもちろん話し方だったり、歩き方だったり、絵の描く姿勢だったりの仕草や演技だけでなく、劇中で使用してるのがガラケーとか、カーテンは窓の大きさがわからないから継ぎ接ぎとか、化粧品は持ってないとか、ご飯はレトルトとか、そういった主人公のバックグラウンドの作りこみによってなのだろう。いやエライザ様が本当に根暗なのかもしれないけどね。根暗でも俺たちのエライザ! むしろ根暗のほうが俺のエライザ! いやいやいやいやいやいやいやいや、お! れ! の! エライザ!
自分探し、母親探し、犯人探しと、探し物はなんですか見つけにくいものですか状態の御子ちゃんだが、ストーリー的には王道なので観客の我々は割と見つけやすい。いちいち色気が駄々洩れのオダギリジョーと、見た目は子供中身は大人! の同級生幽霊を随所に挟みながら(カニだけに)、御子は部屋の幽霊と交流していく。そこでも引きこもりがいきなり仲良くなるのもアレなのでお酒をしこたま飲んで仲良くなった等、唐突な展開にならない丁寧な仕事ぶり。御子が動かしづらい分、幽霊組はクセが強くてコミカル。
幽霊が見えること、死んでも残るものがあること。同じ旨のセリフも、序盤と終盤では全くと言っていいほど感じ方が違う。なにかを説明するわけでなく伝えるのが粋。もともと御子のセリフが少ないのもあるが、いわゆる説明台詞がないのも良いですね。終盤、明るく「生きているうつにやっておけば良かったのに」と生きて行動を起こしてこそというメッセージを送り、そのあとに「死んでも作品は残る」と死者へ手向けの言葉。生きてる者、亡くなってしまった者、残されてしまった者、皆に救いがあればと。「泣くな、笑え」という言葉を添えて。
この作品は幽霊のお話だが、決して化物語ではなく、死んでしまう前はひとりの人間だったことが伝わる人物語である。物語シリーズが本当にいつ終わるのかもわからない、いや終わったんだっけ? どこまででも続くこの空のような終わりのない永遠を誓ったんだっけ? と、いくら蟹が登場するからとその共通項だけでネタを引っ張るのは無理がありますが、この『ルームロンダリング』は本編109分とコンパクト。引っ張ったりもせず綺麗に終わります。と思っていたらドラマ化の報が! さてはそれを見越して変に詰め込まなかったのか?(偏見)
コメント
コメントを投稿