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『惡の華』感想 レビュー 普通ってなんだ。変態ってなんだ。青春のその先も続く日々へ

(C)押見修造/講談社 (C)2019映画「惡の華」製作委員会 『惡の華』 君の嫌いな相槌も 君の嫌いな解釈も 君の嫌いな表情を 全部壊したいよ。 - 『魔女』 リーガルリリー - 押見修造原作の言うなれば行き場のない思春期、思春期の暗黒面を描く人気漫画の実写化。原作者が他の監督からの話はずっと断ってきたという強い希望もあり、井口昇監督が撮った今作は、思ったよりあっさりとした印象というのが正直なところだ。しかし、あの濃度で全 11 巻ある原作を 2 時間にまとめるとなると、どうしたって濃度は多少薄くはなってしまうのは仕方がないことであるけど、性に対する描写が甘いとか控えめとか云々意見があるとは思う。 しかし、かといって例えば前編後編の二部作にしても鑑賞のハードルがあがってしまうし、しっかり性描写し R15 にしてしまうと中学生が見られなくなってしまう。だからこれは絶対に 1 本の作品として PG12 でよかった。できれば、今まさに思春期を過ごす誰かに見てほしいから。そして少しでも掬われて救われたらいいなと思うのだ。 惡の華(1) (週刊少年マガジンコミックス) 映画の冒頭、「この映画を、今、思春期に苛まれているすべての少年少女、かつて思春期に苛まれたすべてのかつての少年少女に捧げる」といった旨の言葉から本作は始まる。『惡の華』は大きく分けて「中学生編」「高校生編」があるのだが、時系列順の原作とは違い、男子高校生の主人公、春日 ( 伊藤健太郎 ) が中学時代を回想するという形式で描かれる。 中学生の春日は山々に囲まれた地方都市で閉塞感を感じながら日々を過ごしながら、ボードレール『惡の華』を愛読し、自分は他人とは違うと思っていた。そしてある夏の日、クラスのマドンナである佐伯さん ( 秋田汐梨 ) の体操着を盗むところを仲村さん ( 玉城ティナ ) に見つかったことから、口止めを条件に契約を結ばされ支配されていくのだが、彼女の変態的な欲求に快感に近い感情を抱くようになっていく。 行動のリアリティという面では、そういうケースが現実で起こる感がゼロではないにしても、実写化によりかなりやばい奴という印象が強くなる。ネタバレを避けるように言えば、「クソムシ」

『アイネクライネナハトムジーク』感想レビュー 「出会いがない」って言いづらくなってしまった

(C)2019 映画「アイネクライネナハトムジーク」製作委員会 『アイネクライネナハトムジーク』 小さな夜 劇的じゃないけれど 最高じゃないけど それが“悪くない”のに - 斉藤和義『小さな夜』 - 2019 年の話題作『愛がなんだ』の今泉監督の最新作は、やっぱり優しくて暖かくて個人的にはそっとありがとうって言いながら胸にしまっておきたい映画だ。ストーリー的になにか劇的なことが起こるわけではない。エンタメ的に最高ではなくても悪くないこの素敵な映画を、『愛がなんだ』みたいにグサグサ刺さったえぐられたやばい仲原やばいという方向性ではバズりそうにはない魅力を、どう伝えれば良いだろうか。 【メーカー特典あり】愛がなんだ (特装限定版) (特製A4クリアファイル付) [Blu-ray] ↑10/25日発売だよ!俺はもう予約した ちゃんとそんなに格好良くなく見える三浦春馬、今回も絶妙な多部ちゃん、うざいのに良いこと言う矢本悠馬、大天使森絵梨佳に、しみじみ泰造などなど登場人物みんなに幸せになってほしい。そう思えるくらい正直ちょっとダメなところもあるけど愛おしくて応援したくなる登場人物たち。そんな彼らと、日本人でヘビー級チャンピオンに挑むボクサーを中心に話が進む。基本的にはこのボクサーを見て元気を貰ったりして何かが生まれていくのだが、同時にボクサーもまたスペシャルな存在でありながら、僕ら一般市民と同じような想いを抱えていることが描かれ、みな同じ人間なのだと思わせる。 本作は大きく分けると「出会い」と「それから 10 年後」が描かれている。 10 年である。青春映画のエピローグとかでよく見る数年後ふたりは結婚式挙げてます的な話ではない。 10 年あれば結ばれることも別れることもある。髪型も変わるし子供も大きくなるし挫折だってある。いいことばかりではない 10 年かも知れないけれど、「出会い」が何かしら影響は与えていて縁が繋がっていく。その先に、出会えたのがこの人でよかった。そう思える幸せ。 というか、よく考えると結構非日常なことが起こっているけど日常の延長に見えるんだよな。そして今を生きる観客の僕らにも、こんな素敵なことが起こるかもしれない。むしろ自分の周りにこんな素敵