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10月, 2018の投稿を表示しています

『search/サーチ』感想と、ネタバレ厳禁に思うこと

『search/サーチ』 非常に上手い作品だと感じましたねー。感動とか驚きとかより先に、これはよく考えたなあという気持ちになる。ほぼ全編パソコンのスクリーン画面と SNS 画面という挑戦的な画もさることながら、怪しさ溢れる登場人物、緊張感の続く展開と丁寧な伏線に、作り込まれてるなあ、計算されているなあと。 SNS を題材にした映画で、ちょっと前にあったエマ・ワトソンとトム・ハンクスの『ザ・サークル』は、すこし価値観に古さを感じてしまったけれど、今作はその辺りもいい具合だったのでは。数年後も名作か?と言われると難しいテーマと内容ですけどね。とはいえ、時代感を表現するのもまた映画の醍醐味であり。 主役のパパはほぼ顔芸 ( はしてません ) というか眉間のシワ芸でしたね。娘を探す父というのは定番のストーリーであるが、この画面の独自性によりかなり新鮮な気持ちで楽しめました。スクリーン画面が多いので、パパ以外あまり演技しないんですけど、例えば文字を打って一度消したりする様子を映すことで、言い淀む様子を表したりとか。保存したファイルの乱雑さで心理状態を表現したりとか、Facetimeを開いて作業内容と結果が表情とリンクしたりとか。芸が細かい。ほぼ全編パソコン画面と SNS と言いましたが、それ以外も監視カメラだったりと、実際の映像を映さない作り。徹底的に"視点”にこだわった映画である。そして、なにより素晴らしいのはオープニング!これは『カールじいさんの空飛ぶ家』に匹敵するかのごとく、素晴らしい出来栄え!泣きそうになりましたよ、ええ。 と、概ね作品については、そこそこ高評価です。が、考えたいのは、こういった作品の宣伝方法って難しいよな…ということですね。こういった、というのは、予想外の展開とか、どんでん返しをウリにしてる系です。 例えば、今年最大の話題作『カメラを止めるな!』でもそうなんですけど、ネタバレ厳禁!ってネタバレですよね?騙された!ってネタバレですよね? 僕はわりとネタバレされても OK なほうで、結果が分かってても、「おー。こういう伏線はってきたか」という客観的視点で楽しむことが多い ( そもそも映画を少し上の視点から見てるとこはあるかも ) のだが、そうではない

『若おかみは小学生!』感想

(C)令丈ヒロ子・亜沙美・講談社/若おかみは小学生!製作委員会 『若おかみは小学生!』を見た。原作未読、アニメ未視聴。ネタバレあり。 絶妙なバランスで成り立っている映画だ。僕はわりと絶賛の立場であるが、しっくりこない人の意見もわかる。ただその絶賛の人と微妙だった人の比率含めて、狙い通りの塩梅だったのでは、とすら思えてくる。そのくらいの扱うテーマは重いのに、印象として爽やかなのだ。あくまで僕がエゴサを少しした結果の範囲ではあるが、微妙だった人も、本編のクオリティというより、価値観、考え方が合わないという意見が多かったように思える。 冒頭、主人公のおっこはいきなり事故で両親を失ってしまう。しかし、泣きじゃくる様子や葬儀シーンなどは一切流れず、ひとりスーツケースを持って旅館を営む祖母の家へ向かう。さらにはおっこ以外誰もいなくなってしまった家に「行ってきます」と言う、電車で窓に向かいの席にいる家族が映っても気にも留めない様子が描かれる。気丈に振る舞おうとしているわけではない。両親の死をまだ実感していないのだ。おっこは両親と戯れる夢を見る。 喪失と向き合うのは。朝倉あき主演『四月の永い夢』という映画 ( 良かった ) があるが、今作のおっこも、同じように、どこか覚めない夢の中にいたのでは。序盤のおっこは色々な幽霊や亡くなった両親を見るなど、明らかに現実を生きている感じはしない。しかし、紆余曲折あり ( 後述 ) 若おかみとして働き、学校に行き、人と触れ、徐々に「生活」をしていく。生きていく。そしてそれに比例するように、段々幽霊は見えづらくなり、最終的には両親の死を理解する。つまりそれは、生をもって死を実感したのだ。 今作で意見が割れるところは、若おかみになるところ、そして真の意味で若おかみになるところであろう。悪く言えば、なし崩し的にというか、そこに本人の意思はなく、若おかみとして働くことになり、真の意味でなるシーンは、ネット上では『ダークナイト』と言われているように、いい子すぎ、強すぎでは、という気がしないわけでもない。 おっこには居場所がなかった。家族を失い、誰も知らない土地へやってきた小学生は、そこで生きていかなければならなかった。もう、そうするしかなかったのだ。縋るしかなかったのかも